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日和下駄―一名東京散策記 (講談社文芸文庫)
日和下駄―一名東京散策記 (講談社文芸文庫)
講談社 1999-10
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おすすめ平均 star
star土地の勾配をたどる目線
star荷風さんと散歩

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 以前『断腸亭日乗』は挫折(しかも岩波の抄録のを(笑))のだが、これは何とか読めた。
 物事というのは、一応ちゃんと相応しい時に起きるようになっていて、この齢まで幸田文を読まずにいたのも、きっと私が結婚して、川の東へ引っ越して、子供しかも娘を持ってから読むようにという、無駄のない天の配剤だったのだろう。
 それと同じように、この「東京散策記」も、もっと昔に読むよりはわかりやすかった、言い替えれば、引っ越して川の東側が地元になったために、馴染み深い地名が多く出てきたということだ。勿論荷風は川の西(生まれ育った所)も東も歩き回っていて、私も元々皇居を挟んで今の家とは反対側の育ちで、遊ぶ時は都心だし最初の勤め先は神田錦町だったから、結婚して引っ越すことでいきなり行動範囲、知識の範囲が倍になった。そこへ、いきなり著者が錦町の学校へ通っていて竹橋に平川門に半蔵門とやられて実に懐かしかった。会社の最寄駅は竹橋か大手町で、会社帰りにはよく美術館に行くために歩いて、平川門の前にあるその美術館へ行き、竹橋を渡り、九段下から帰ってきたものだ。そして他にも、今でなければふんふんと思うことができない場所が登場するわけである。
 …というのは全て、いずれは関連する場所でも歩きに行ってみようかという夢だけはあるからで、さてこれもいつになるのやら。
 あと、さっきWikiで知ったのですが、何と丁度今月1日!に、荷風作品は著作権が切れたそうです。偶然ってあるんですね〜。