8/11〜13 マイクル・コナリー『エコー・パーク』

エコー・パーク（上） (講談社文庫)
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エコー・パーク（下） (講談社文庫)
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　コナリーのボッシュ・シリーズを手にするといつも二律背反である。読みたい。が、読んでしまいたくない。
　今回も、机の上に立てて1週間少し、しげしげと背表紙を眺めた後、貸出期限まで5日になったのを機にとうとう読み始めた。そして、珍しく少しずつ（途中で他の本も読んだりしながら）読んだ。相変わらずキツい話だからである。
　このシリーズ、とにかく面白い止まらないそして勿論私はボッシュ大好き愛してる。でも、とにかく犯人が悪い奴。理解し難い悪い奴。私は、このシリーズに出てくる犯罪者が苦手なのである（得意な人もいなかろうが）。しかし、読むということは犯罪者とお付き合いしなくてはならないということである。それが億劫。その億劫さ、重さが珍しく「少しずつ読み」にさせた。まあ上下巻ではあるが活字が大きく、さしてボリューム自体ないし展開のスピーディなので、下巻はほぼ一気読み。
　よくもまあ毎回毎回、ボッシュばかりが面倒事に巻き込まれるものだと思いながら、彼の強運と正義を信じて読む。正しいことをすればするほど、気がつけば何故か自分を陥れる陰謀の真っ只中にいる。何でそこまで邪魔にされるのか(笑)。警察にいない方がいいんじゃないか(笑)（一度実際辞職して私立探偵になり、また警察に復職した）。でも警察官ほど彼に相応しいものはない。最早そういう運命というか、全ての嫌なベクトルを1人で集めてしまって1人で頑張って解放するというか。しかもこの人、やっぱりモテるしなあ〜（笑）。
　ボッシュが13年間決して手放すことがなかった女性失踪事件が大きく動く、という幕開け。とっかかりもいいし、ボッシュの内面描写にも必然性があり、シリーズならではの事件や再会も…
　それに、もう一時代と言っていいほど長い（18年！私がリアルで付き合い始めてからは8年ぐらい！）このシリーズの初期を思い出させるようなシーンには、心の中で唸りましたね。ボッシュ、変わってない。作者、元気すぎ。
　どこが面白いかを言ったら全部ネタバレになるので言わない。
　このシリーズは、中期ぐらいからは上下分冊が増え（活字が大きくなったせいもあるが）、1作1作が長いが、本当に長い（＝ボリュームも兼ね備えている）と言えるものはそんなに多くないように思う。単に読みやすいからそういう印象があるのかもしれないが。今回も多分、一気読みしていれば2時間程度だと思う。が、とにかく精神力を使うのは今回も同じ。胸がドキドキ、という古典的表現しかない。ボッシュ愛とシリーズ愛に、毎度毎度、新作を手にするたびに、読みたい、でも読んじゃいたくな〜い、という二律背反に楽しくモダエた後、中身をたっぷり楽しませて頂きます。最早S〇かい。
　ハリーことヒエロニムス・ボッシュは、ロス市警刑事、バツイチ（弁護するわけじゃないがどっちかというと奥さんの方に問題アリ）、娘1人。ってこういう設定の主人公多いなあ。長いこと、別れた奥さんのことが忘れられず、かといって、異性にははっきり言って、モテます。そういえば、割と女性関係が途切れてないような。しかし、性格は、これもはっきり言って、女性が一緒にいてとても安心できるようなタイプじゃありません（だから再婚はできないのね(笑)）。直情径行、必要とあらば指示には従わない、媚びない、過去のトラウマあり。ブログにも「一匹狼主人公紹介」のような記事で書きましたが、正に、上下左右満遍なく媚びない、一匹狼中の一匹狼、キング・オブ・ロンリーウルフ。…でもモテる(笑)。そう、考えてみれば、彼に惹かれ（全員がベッドを共にするわけじゃありませんが）、時には守りたくなる女性（そうそう、一匹狼だからこそ、守りたくなっちゃうんだよね！）も、いい女性ばかり。本物の男を見分けて惚れるのもまた、本物の女だけなんですな！　
　しかし、繰り返しになりますが、1冊にできませんかねえ〜。どうして今の文庫ってのは活字が大きくて、大したボリュームじゃない本まで分冊にして金取るかね。ボッシュシリーズもホントそう。今作も、昔の活字のサイズなら1冊で、900円ぐらいのものだったけどねえ。