「ヴィクトリア女王 世紀の愛」

ヴィクトリア女王 世紀の愛 [DVD]
ヴィクトリア女王 世紀の愛 [DVD]
Happinet(SB)(D) 2010-07-09
売り上げランキング : 5990

おすすめ平均 star
star自ら選び勝ち取った、愛と実りある人生
star完璧女性向け映画。
star一時代を築いたヴィクトリア女王としては…

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 映画公式サイト
 http://victoria.gaga.ne.jp/index.html
 …他にレビューしたい本もDVDもあるの、ですが…
 自称「クイーン映画ウォッチャー」としては、もうここまで来ると引っ込みがつかず(引っ込めよ)…
 この映画、去年の12月公開ですから、もう1年近くになりますか。
 初めに、この映画、「名画」でも「語り継がれる傑作」でもないことは申し上げておきます(私が断言するのもアレですが)。つまりはわざわざ時間捻出して子供を誰かに見てもらってまで映画館に行くほどのモンじゃあありません。DVDで十分。映画館なら、大画面で綺麗な映像を観るという意味はあるけど。
 Amazonレビューにもある通り、そう、一言で言えば、女性向け映画。男性が観てもぜーんぜん、面白くないです。
 ストーリーも、醒めた眼で見ちゃえば、タルいっていうか、衣装とかアクセサリーが豪華ってだけで。ありがちな女王映画です(笑)
 歴史的背景も台詞だけで流されてます。知っている人は自分で補完したりツッコミ入れつつで観られますが、全く知らない人は「ハハーン?」のまま。
 「歴史映画」ではないので、色々と物凄くハンパ(笑)。でも気にしない!「ヴィクトリア女王の愛と真実」と謳っていますが、確かにイチャラブは描いても真実を描いてるわけじゃあない(笑)。
 ただ、1時間44分とコンパクトなのはいいです。テーマを絞ってるってことで♪
 原題を「Young Victoria」という通り、女王の少女時代が一瞬あって、17、8歳の頃から、第1子を産むまでのお話。
 だったらさっさとアルバート公と結婚してイチャラブしてくれればいいのにさぁー、結婚までに全体の半分チョイかかんの〜(笑)。
 人生の一挙手一投足が「政治」と密接に絡み合う地位に生まれてしまったため、結婚までの道程もそのまま政治的駆け引きになります。だから長々と2人の手紙のやりとりや、2人を取り巻く権力闘争のプレイヤーたちの動きで描かれる。そして、政治的思惑があって引き合わされた2人が、いつしか本当に恋に落ちるという黄金パターン。特に、アルバート公の方がマジ本気。まあ史実でも相思相愛だったそうですから。
 この人、叔父さん(色々あって貧乏貴族からベルギー王になっちゃったレオポルドさん)からイギリスの援助目当てに「女王のベッド」に送り込まれた甥っ子でドイツの公子なんですが。叔父さんの妹がヴィクトリアのお母さんなので、2人はいとこ同士ということになります。
 このお母さん(死んだ王弟ケント公の公爵夫人)が、史実でも非常に強欲な人で、愛人コンロイ卿とつるんで、娘が即位した暁には権力を握ろうと画策。映画ではさほど酷くは描かれていず、泣かせる手紙書いちゃったりして、「実はいい人」にしようとしてるのか何なのか、非常にハンパな人物像。折角ミランダ・リチャードソン使ってるのに。コンロイ卿はまあ史実でもそういう人で、映画では超悪人。唯一の嫌われ役。このコンロイ卿に何故あそこまでお母さんが言いなりになるのかも、全く説明はされてない不親切設計。まあ気にしない。
 ただ、女王の政治と恋に密接に関わってくる、コアな男性キャラはみな美形。それだけで許す(笑)。
 アルバート公はちょっとファニー系入ったハンサム。
 女王が最初の良き政治の師と仰ぐ首相メルバーン卿は金髪のハンサムで、当時の、細身で襟の高い衣装も相俟って非常にグッジョブ!
 アルバート公のお兄ちゃん(何故この人ではなく弟が最初から女王の婿候補なのかも説明なし)も美形で、更にはこのお兄ちゃんが、弟思いのいい人なんだなー!出番のたびに、絶妙に弟の本気の恋を後押しする台詞のいちいちがもう好感度200%。一番好きなのはこのお兄ちゃんかも。
 結局は、どんなに若く、未経験なしかも女性であろうと、「王冠」がその上に輝いている限り、どんなお兄様もおじ様も、周りで脳味噌すり減らすしかない。こういう状況には、女性としては、自分に置き換えてみてウッハウッハしてしまうのは、最早女性のサガです(笑)。
 女王ですから、プロポーズも自分から。「待つ男」アルバートにキュンキュンするもよし。
 そう、これは、女性が「その気」になって、映画館で、自宅のリビングで、「浸る」ための映画です。
 私は浸るとまでは行きませんが、まあ、人と人が愛し合い、大切にし合っている姿ちゅうのは、やっぱりいいもんだなーとか思って観てました。
 有名な話では、アルバート公は女王が「女王です」と言ってもドアを開けず、「あなたの妻よ」と言ったらドアを開けたとかね。どんな女でも、妻である以上プライヴェートでは妻であれということなのか。まあそのへんは勝手にして下さいって感じです。
 何せこの人たち、世界に向かってのろけを発信している人たちですから〜!
 ロンドンの、「ヴィクトリア&アルバート博物館」(V&A)ですよー!「ロイヤル・アルバート・ホール」ですよー!大英帝国でさえ2人の愛のフィールドよ♪(帝国主義の是非については突っ込まないように…)
 特に、V&A(博物館としては良いです)には、2人がイチャラブに見詰め合ってる像が、恥ずかしげもなく展示してあるぞー!なーに世界中の観光客に見せつけてんでい!
 ちなみに、本物のヴィクトリア女王はチビの出っ歯だそうで(写真では歯は見えませんが)、確かに、肖像画はどれも美化160%といったところ。V&Aの像もかなりの美化済みです。
 映画の後半、結婚してからは、寝室のシーンが一杯♪(脱がないけど…)いや別に観たくないさ。美男美女だから綺麗ではありますが。
 まあそのへんも含めて、若い女性も中年女性も、恋のときめきに浸り、或いは思い出すという…それだけ。
 
 野暮を承知で歴史的背景を少し。
 イギリス王家は当時既にイギリス人の跡継ぎがなく、ドイツから王を迎えて、「ハノーヴァー朝」という、ドイツ人の王家になっていました。だからケント公もその夫人も、娘のヴィクトリア女王もドイツ人。当然現在の女王一家も9割9分ドイツ人。
 当時「ドイツ」はというと、まだ分裂時代で、アルバート公は、色々な国があるうちのザクセン=コーブルク=ゴータ家のプリンス。色々あったようで、叔父さんがベルギー王になってます。
 イギリスでは女性も王になれるので、当然婿がいて、女王の子の代から、婿の姓が王家の姓になります。
 このへんが厄介で、2次大戦時には、「敵であるドイツ系の姓はよくない」ということで、イギリス王室は現在の「ウィンザー」に改姓。ちなみに、この慣習でいくと、現皇太子が即位すると、王配エディンバラ公(ギリシャの王子)の姓「マウントバッテン」が王家の姓になるはずなのですが、現女王エリザベス2世は即位の際に、「姓は変えない」という書類にサイン。これは、公のおじであるマウントバッテン卿の「自分の姓を王家の姓にする」という”野望”を阻止するためだとか(BBCのドキュメンタリーで見ました)。
 も一つちなみに、故ダイアナ妃はイギリスのスチュアート王家の流れを汲み、イングランドの4人の王の血を引いているそうで、ウィリアム王子の代で、久々に、イングランドの王の血を引く王様になります。
 
 王位継承までの問題は、摂政を置くかどうか、無事に即位できるか、誰と結婚するか。即位後の問題は、政府との関係をどうするか。
 この映画でも重要人物なのが、首相メルバーン卿ですが、彼の、政敵との戦いにも女王からの信任が当然影響してきます。史実でもヴィクトリア女王は後々までも、自分の支持する首相にとそうでない首相にでは、態度がかなり違ったようで、政治家たちも苦労したようです。言い換えれば、わかりやすい女王というか。映画でも、「メルバーン夫人!」と揶揄されたり、熱烈なメルバーン支持と国民感情のズレから人気を失いかけたりと、とてもわかりやすい(笑)。(同時代の西太后も、女傑というよりは、「好きなものは好き、嫌なものは嫌」という女性的なタイプであったそうな…最近の研究=加藤徹西太后』中公新著などによる)
 更には、アルバート公と死別後は政治を疎かにして王制の危機を招いたり、そこに現れて献身的に仕えた馬丁のブラウンとはその親密さから「ブラウン夫人」と陰口を叩かれる(或いは2人は秘密結婚したという噂さえ…)。このあたりを描いたのが、「クイーン・ヴィクトリア 至上の恋」ですが、何故かDVD化されていません。先日BSで放送されまして、勿論、「お宝!」と録画してDVDに焼きましたとも。
 王様であっても女性、政治家は男性となれば、”男女の仲”を示唆する揶揄は避け得ないものなのでしょうが(誰も本気でそう思っちゃいなくても、ネタとして)、わかりやすいっちゃあわかりやすい。割と付け入られやすいタイプなんですかねぇ。
 愛人はいてもあくまで「独身」を貫いたエリザベス女王の方が、やはり、やり手であったなと思います。人間的にもエリザベスの方が強そうだし(笑)。
 そういえば、イギリスに女王は数あれど、初代は独身、あとは夫も王様で共同統治(映画で、ヴィクトリア女王アルバート公は「共同統治した」となっているが、あくまで公は助言者)、或いは結婚しても跡継ぎなし。家庭人となったのはヴィクトリア女王と現女王ぐらい。スコットランド女王メアリ・スチュアートに至っては、正にエリザベス1世とは対照的に、3度の結婚全て男運最低、結婚が自らの首を絞めました。
 そりゃあ、誰かと恋をしたら、その人と結婚して一生ラブラブしたいvと思うのは、自然な感情ですが…女王ですからねえ。当たり前の感想ですが、愛は強みでもあり弱点でもあるという真理が、一番表に出てしまう立場だなあと思いました。
 映画の最後では字幕で「その後」がサーッと説明されて、2人の愛が大英帝国の黄金時代を生んだとか、この夫婦だからこそいい政治をしたとか、ひたすら2人を理想化してますが、あくまで映画での話。
 仮にヴィクトリア女王が独身だったら…?果たして夫の支えなしでは政治ができなかったか…?
 果たして世紀のロイヤル・ラブは、結果オーライ、だったと単純に片づけていいのか。
 まあ真面目なことは、学者に任せておきましょう。

 後の話といえば。
 最後に出てきた第1子、これがあの女たらしのエドワード7世になっちゃうのかぁ、とか思ったのですが、この子は王女。次に生まれたのが皇太子エドワード。この人も母親が長生きしたんで割を食っちゃいましたな。わかりやすい女王様の割には、息子に全く政治をやらせなかった母親。短い治世の間に何となく各国の間を取り持って、「ピースメーカー」とは呼ばれました。
 この細くて可愛い女王が、子供ボッコボコ産んで、ヨーロッパ中に血友病撒き散らすんだよなあ…とも思っちゃいました。2人の間には9人の子供ができて、ヨーロッパ各国の王様やら王妃やらになり、女王の葬儀(夏目漱石も、イギリス人に肩車してもらって見物したそうな)にやってきた孫たちはみんな大国の王様。その中で、悲劇なのは、女王の孫でロシア最後の皇后。彼女が生んだ皇太子の血友病ラスプーチンの登場を招き…。
 まあ先のことは先のこととして。

 女王、と言えば、同時代の西太后とか(完全版DVD-BOX買ったのに観てない…)、エリザベス1世をクエンティン・クリスプ(!)が演じた「オルランド」とか、古い名作を未だにレビューしていないのが心残り。いつかできるのかなあ。
 
 ↓これも地味な映画でした…「女王役者」ジュディ・デンチが「恋におちたシェイクスピア」のエリザベス1世に続き、ヴィクトリア女王に。
 

クイーン・ヴィクトリア‾至上の恋‾【字幕版】 [VHS]
クイーン・ヴィクトリア‾至上の恋‾【字幕版】 [VHS]
松竹ホームビデオ 1999-07-21
売り上げランキング : 4350

おすすめ平均 star
starビクトリア女王の晩年に感銘を受け、ビクトリア朝時代を知る

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

オルランド 特別版 [DVD]
オルランド 特別版 [DVD]サリー・ポッター

パイオニアLDC 2002-08-23
売り上げランキング : 28537

おすすめ平均 star
star好き嫌いが分かれます
star天使の歌声
star今の時代から見た、原作のエッセンスの再抽出

Amazonで詳しく見る
by G-Tools