かけこみゴッホ展

 前回、国立近代美術館(竹橋)でのゴッホ展は、主に日本の浮世絵との関連をテーマにしていた…と思う。目玉だった、夜のカフェを描いた作品は大好きになった。
 そして今回は、ゴッホの絵と、影響を与えた画家の多数の作品が並べて展示されている(作品数はなかなか多い)。ゴッホの作品の番号は黄色く色分けされているのだが、影響を受けただけあって似てるからわかりにくい(笑)。それだけ影響の受け方がわかりやすいとうことだけど。(ちなみに音声ガイドは安住アナ!)
 ゴッホの、画風の変遷(=画家としての成長)はよくわかる。
 独学にしては随分最初から上手かったんだなあ(ピカソだってダリだって、元々、普通の絵を描かせても上手かった!決してヘタウマではないのである)とか、模倣から独自の画風に成長していく段階とかがわかると、彼オリジナルの、あの、最低限の線なのに対象物を見事に捉えるあの線描を展示する最終コーナーは感動的ですらある。補色の使い方が(前記の、カフェの絵も荘だが)とても大胆だし、同系色でまとめた作品はそれはそれで効かせ色や質感の表現が上手くて平坦になっていない。
 つまり、この美術展のテーマ通り、ゴッホが芸術家になる道程という「縦の線」はくっきりする。
 が、そうなると、彼は何故最終的に画家として生きようと思ったのか?彼の中で「絵を描く」ということはどういうことなのか?という「横のつながり」がますます気になってくる。
 職を転々とし、貧乏と心の病と戦い…ゴッホってホントに、皆さん思われると思いますが、日本人好みの人生ですよね〜。(浮世絵が彼に影響を与えたというのは誇らしいことですが日本人好みの人生とはこれはまた別の話で。)
 ゴッホという人間の中の画家という一面。他にやれることがなくて画家になったというのでは単純すぎるし、逆に、それまでの苦労も芸術家となるための道であって、彼はなるべくしてなったんだよね(しみじみ)、というのでも結果論。まあ一言で言えば「逆境の中で!」というこれまた日本人好みなパターンに単純化してしまうことが多い、と思うのだが…そんなもんではないはず。
 勿論、だからこそ、複雑であろうその部分の研究―彼が画家になった理由、彼が美術史に現れた意味、という美術評論や美術史の分野での研究は勿論、或いは彼についての精神医学的な分野での研究もあるかもしれない―については、恐らくもう何千という論文が書かれているだろう。
 だから、一般の観客、ミーハーな美術ウォッチャーとにとっては、「ある意味余計わかんなくなる」という、もやもやを提起する美術展であり、しかも、そのもやもやが嫌じゃない。少なくとも私にとっては、わからなく(わかりにくく)なったことが妙に快感だった。好きなものは、わかろうがわからなかろうが好きだし、わからない方が楽しみが沢山あるから。
 そしてもうすぐ20日で終わりです(笑)。中が広いので平日は入場待ちはないですが、前の方でちゃんと絵を見るのは大変という混み具合。
 オマケ。
 ゴッホの「自殺」だって出来すぎだ!?明かされる衝撃の事実!…あくまでフィクションですが。大分昔ですが、読み終えてハァーと納得してしまった(笑)。普通に謎解き、危険に満ちた冒険物としても楽しめます。

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