今日の分

澁澤龍彦『秘密結社の手帖』(文春文庫)

秘密結社の手帖
秘密結社の手帖

 アブナイ本じゃありません。普通に、この分野についてよ〜く調べて平易に書かれています。
 藤代冥砂(写真家)の解説がとてもよい。そう、渋澤先生は、人間としてはごくごくノーマルな人なのだ。愛しながらも客観的に眺めて書ける、って本当にいいことだよね。本当にアブナイ人は犯罪者か精神病院行きになるだけのことだし、仮に何か書いたとしても、本当に踏み外してしまったものは少なくとも文学ではなかろう。文章を書くというメンドクサイことは正常でなくてはできない、というのには納得。
 これは今読んでます。但し河出文庫の方。(5/23、感想は同上)
黒魔術の手帖
黒魔術の手帖

筒井康隆編『夢探偵』(出版社忘れた)

 「夢」に関する小説、日記。あれ、どれが面白かったんだっけ…。正確には「夢」ではなく異常心理なのだけれど、半村良作品とかだったかな。澁澤龍彦作品はエッセイ集から1本収録。そうだ。各作品の前に筒井さんの解説がついているのですが、澁澤作品のそれがすごい。何でも、澁澤氏の没後、夫人からの手紙によれば、筒井さんの書こうとしたことと澁澤作品とはとても似通っていたとのことで、筒井さんは生前交流がなかったのが悔やまれる、と書いておられました。ファンだって悔やまれるって!こんな夢の組み合わせ!!

芦辺拓『少年は探偵を夢見る 森江春策クロニクル』(東京創元社

少年は探偵を夢見る―森江春策クロニクル
少年は探偵を夢見る―森江春策クロニクル

 物理トリック心理トリック色々ありしかもかなりメタ的?というか掟破り?的なものにまで挑戦、と盛り沢山。ただ、このシリーズにも近年の「探偵萌え路線化」に関係して色々言いたいことはあるのだけど、また後日。

イアン・ランキン 延原泰子訳『影と陰』(早川・ミステリ文庫)

影と陰
 リーバス警部第2作。引き続き遡り刊行。
 前回の事件解決の功績で(ただ彼自身には苦い結末で)警部に昇進したリーバス。後の方の作品を知っていると、そろそろ現在のリーバスに近づいてきた感じ。今やすっかり上司ぶりも板についているジル・テンプラーがまだ気になる存在だったりと、今からでは想像もつかない初々しい要素もあるけど(笑)
 第1作よりはいくらかストレートな話ですね。でも私、9割どころか9割8分まで読んでも犯人わかんなかった(笑)導入部からしていいし、伏線だって読んでれば「あ!」とわかるのに、どうしても犯人だけが。捜査のねじれっぷりがやっぱりうまいですね。
 それにしても、”Hide&Seek”というスリリングな原題がどうしてこういう邦題になるんだろ?原題ではHideが重要な意味を持つのに…ネタバレ回避のためか?
 今年また現地では最新作が出るそうです。何でも英国のミステリの売り上げの10分の1がこの人だという超人気作家。特にエドガー賞を受賞したからでしょうが、本当に、この人の新刊が迫ると現地の書店では大々的に宣伝しますね〜。一昨年ロンドンで見ましたが、そん時も「は、早く読みて〜!!」と思いました。その時は既にP.D.ジェイムズの新刊が出ていて、空港にペーパーバックもあったんですが、「それを訳し終わるより先に邦訳が出るよ。」と相方に言われてやめました(笑)