ティラノ16歳

 昨日TVをつけっぱなしにしていたら、Nスペ「恐竜vsほ乳類〜1億5千万年の戦い〜」というのがやっていた。ちょこちょこと見た。今日も第2回をやるというので、他に見るものもないので全部見た。
 マニアというほどではないが、父親の影響で、幼い頃から恐竜「好き」ではある(アンタの子は息子じゃなくて娘なんだが!!)。
 とてもとても小さい頃、上野の恐竜展で化石に触って、触ったという「証明書」とかも貰った。
 そんなことで、幼稚園の粘土遊びでは恐竜以外作ったことがなく、既に男子にモテなかった(モテないのはそれだけじゃないが)。
 最初に入った会社(イベント会社。但し破産)は恐竜展のパッケージを持っていて、倉庫はジュ○○ックパークだったりした(ウルトラとかスーパーをアメリカから借りるという企画は某大新聞社に取られてその後どうなっただろう)。
 今でも、つまりは古代生物なら好きだ(あまり「動物」そのものは好きではない…)。
 「好きな動物は?」と訊かれたら、
「始祖鳥とダンクレオステオスとプテラノドン
と答える。
 最も萌える生き物は、カンブリア大爆発な方々である(たまらんねー、ハルキゲニアとかオパビニアとか)。
 さて、この恐竜研究という世界も、私が小さい頃に比べると大分研究は進んだが、全体では確かに、技術の進歩や物の考え方の広がりによって進みつつも、各論においては「説が二転三転する」とも言える。
 私が最初の会社にいた、ほんの6、7年前と比べてさえ随分変わっている。
 今日出てきたT-REXだって(こういう呼び方も昔はしてなかった気がする)、一時期は「走るのが実は速かった(時速60〜70km)」説で賑わい、それからまた多分10年もせず、今日の番組では「自転車並み」。では何故狩りができたのか(顎は強力だが手は小さく脚も短い)。果てはとうとう、今日の番組では「単独行動ではなく、羽毛を持ったすばしこい幼生と、強力な親が群れを作り、協力して狩り」説まで飛び出した。羽毛を持った子供ティラノに追われたトリケ(ラトプス)が、突如横から飛び出した親ティラノに「ガブリ」とやられる場面には、「こんな人生(トリケ生)嫌だ」と思った。(このあたり、番組の後半で大トリ?として登場したのが大御所フィリップ・カリー博士。最初の会社の時はよく聞いた人なので懐かしかった)
 T-REXの骨を輪切りにし、骨の「年輪」で成長の経緯を調べるという方法。16歳から20代前半にかけて急速に「成長期」を迎え、以後は余り成長しない、という説。この成長期に、子供体型からコワ〜イ大人になるのだという。多分成長期にはエサも沢山必要で、沢山動いて、親はガブリとはやるけど、餌は子供に多めにあげたりするのかなあと思った。それにしても、そうか、恐竜にも、「アイコ16歳」(古)なんて時代があったり、妙齢の乙女がいたりするのだなあ(いるのか)。アメリカには「スー」というT−REX(もしくはその類)のでっかい化石があって、でも引き取り場所がないとか何とかで問題になっていたような…あれはどうなったんだっけ。その他、「ブラック・ビューティー」とか、メスとわかるとそれっぽい愛称がついたりするのだから、女というものは恐竜でもロマンである(なのか)。
 T-REXとはいえ、子供のはちょっと可愛かった。飼いた…ってピー助かい!!(ありゃ草食だが)
 色も、現在の再現映像はあくまで現存の爬虫類がモデルになっており、勿論本物はどんなだったかわからないが、一時期は「カラフルだった」説もあった。まあ流石に、余り確実でないことは採り上げないらしく、毎度の「見てきたようなCG」(これが楽しいんだけどね)では穏当なカラーリングだった。
 羽毛恐竜も、今日も出ていたが中国で発見された時は大騒ぎになり、一時期は「恐竜が鳥になった」説が幅をきかせ、今はまたそれも下火だ。ストレートに恐竜→鳥ではなく、エサを効率よく取るための、ほ乳類との切磋琢磨(先に述べたT−REXの子供など)と位置づけられているようだ。(でも中国の発掘スケールも凄い。因みに「マメンチサウルス」は「馬門渓」で発見されたからこの名がついた。そういえば、先輩の中国土産に、セットで売られていた「恐竜の化石の破片」をもらったなあ。)
 他ならぬNHKの「生命」というシリーズの最後の方の回、「花に追われた恐竜」が、「違ってました。」と記録から削除された(よな、確か)なんてこともあったのだが、ほぼ同じような路線=「花の出現→ほ乳類多様化→恐竜より生き残った」説として、今日の番組でも出ていた。微妙である。
 何にせよ、「恐竜時代の全てを通じて、恐竜はほ乳類と共存していた」という前提自体が、実はやっと最近証明されたことらしい。確かに、私が子供の頃の恐竜の本など見ても、ほ乳類とはあくまで、「恐竜絶滅後、地球に広がった」という記述しかなかった、つまり、恰も、「恐竜の後に出てきた」ように受け取れるのである。当時は、恐竜は恐竜、という感じで、あんまり「ほ乳類との関係」があること自体着目されていなかったのかもしれない。(余談だが、その、昔読んだ本にも載っていた、日本の恐竜「フタバスズキリュウ」も、最近また日本の女性学者がらみで話題になった。(正確に言うと、所謂魚竜翼竜は「恐竜」ではないのだが、水生の草食首長竜は恐竜だったか?このあたり曖昧。)
 研究というのは、このように、小さな面で見ればただ二転三転しているだけのようでも、時には前提そのものを変えるようなドラスティックな説が生まれ、進んでいく。
 同じようなことは、たまたま先日見た、「その時歴史が動いた」の荻野博士の発見(月経→排卵ではなく排卵→月経)にも言える。但し、話がずれるので脚注とする。*1
 この、時折波のように生まれる「ひっくり返し」あるいは「根本的な観点のずらし」…などは、いくら枝葉の説が変わっても、残る。今回の、「恐竜時代の共生と切磋琢磨」もこうした「残る説」になるのかどうか、注目される。
 今回のCGで何か妙に感動してしまった、「化石からニューンとCGの再現生物が起き上がる」場面に象徴されるように、古代生物の研究もまた、もう、人間に想像力というものがある限り、ハマってしまうと堪らんものなのだろう。
 このところ展示とかは見ていないが、恐竜など古代生物の話は今後も折に触れ見守っていきたい。

*1:番組でも言われていたように、「荻野式」=「避妊法としての利用」は、現在では役目を終えても、「前提のひっくり返し」として産婦人科研究に与えた意味の巨大さは変わらない。
(余談だが、番組でもきちんと説明されていたように、荻野式は「予定月経開始日」がそもそも不確定要素であるため、避妊法としては有効ではない。博士自身も安易な利用は厳に戒め、特に男性に対して「子を持つことの意味を考えよ」と提言している。←女性の方は自分の基礎体温表(そもそも基礎体温の仕組みが解明された今では所謂「荻野式」は不要)で実際に算出してみて下さい。これだけに頼ることがいかに危険かわかります。)