紹介:柳広司をこの時期に

 さてこの時期になると、皆様そういう話の本を色々と挙げられると思う。
 私としてはやはりこの1冊。
 柳広司『新世界』(新潮社、2003)
 新世界
 レビューはこちら。これ今年の1月かあ。まだ今年なのに随分昔に思えるなあ。
 http://masamunet.seesaa.net/article/11826068.html
 6日の日記はお休みしてしまったのだが、正にこの本は…これである。
 怖い。本当に怖い。あの怖さがこれほどに伝わる話も珍しい。
 柳広司といえば、「普通の推理小説として始まって、毎度必ず最後はおっそろしく重いネタに至る」というパターン。最初に読んだ『贋作『坊ちゃん』殺人事件』で、「何故、何故ぼっちゃんがこーなる!!!(・0・)」だった。そして『はじまりの島』に『饗宴』、『黄金の灰』。特に『聖フランシスコ・ザビエルの首』でもやられた。毎度、「うーん(--;;)」である。
 あと、ついでに、まだレビューしたことのない作家だがこの機会に名前を挙げておく。重いテーマというわけではないが、舞台設定の怖さでは、谺健二『未明の悪夢』(東京創元社創元推理文庫あり)。既に死ぬほどの数の死に満ちた場所でなお、「殺人事件」の謎を解く、という矛盾。不謹慎一歩手前。そこでは人の死にどんな違いがあるのか?推理はともかく、阪神大震災というものがこれほど詳細に書き込まれた小説も少ない。本当に怖かった。
 この人だと、同じく神戸を舞台とした『赫い月照 A Suma Case』(講談社)も、めっちゃ怖かった。とにかく重い。
 未明の悪夢 赫い月照