あいづ・そうかつ

t_masamune2006-11-27

 結論:喜多方ラーメンが美味かった。
 …いやそれもそうだけどっ!!
 会津のことを語るのは、会津の人に任せとくのがいいだなッス。」<ニセ会津
です。
 「語り継がねば!」
という思いを新たにするどころか、そんな気力もなくなるノックアウトパンチ。
 「はい、もういいです、よくわかりました…(--;)」
と、這々の体で退散。 
 「ほんとかよ」と思う方には、「じゃ、いっぺん行ってみ」とオススメしたくなります。
 ひらたく言うと、
「何らかのイメージを抱いて行って、実際にイメージ通りかそれ以上だと、却ってうろたえる、引く」
という初めての体験。
 会津は、まだ怨んでます。怖いです(T_T)。未だに薩長出身者は宿に泊めないっていうのもホントかも。
 普通は、
「あれこれ知識を仕入れたり、憧れたりして行っても、現地の人は意外と醒めてる」
ということが多いじゃないですか。
 私はよく、「江戸情緒」を求めてあちこち東京を歩き回って、こういう目に遭います。神田あたりを歩けばビル街。落語だって、庶民の社交場のはずが、今や「解説」が必要な「古典芸能」様になっておられる。
 京都なんかはもう、地元の人は観光客なんかナメきっていつつ、お金はしっかり頂きましょうという、まさに京都人、本音を出しません。
 他にも、有名な観光地って大抵、行ってみると「観光地化」という一律の言葉で括れます。
 でも、会津は本当に(イメージ通り)まだ怨んでるんです。(--;)
 また、
「現地に行ってみると、一般的イメージよりも産物や特色が豊か」
というのが定番なのに…
 会津には本当に、会津藩400年弱の歴史と戊辰戦争しかないんです。(--;)(お酒も会津塗もあるけど、暗い歴史を前面に押し出しているので、お金を使う気にならない…。)
 会津人自身もそれを十分意識していて、「観光の目玉が暗い」ということに何の疑問も抱いていない…。
 「まっとうに勝負している」という言い方もできますが、余りにも熱くて真面目で、観光というにはキツい。私ももう若くないってのもありますが。
 フツーに何ら知識もなく観光に出かけた人は、洗脳じみた「会津と言えば戊辰戦争」の宣伝にも、「はーそうですか」とは思えどすぐ忘れる。
 知識もあって、しかも冷静に見られる人(私…も一応。ま、”病気”は去ったと思って頂きたい)が行ってみると、むしろ上記のようにドン引きして帰ってくる。
 ヘンな思い入れに溢れて乗り込んだ人は、「やっぱり会津新撰組は正しい!薩長は悪いヤツらだ!!」という、誤った自信をつけて帰ってくる。
 そういう土地です。

とはいえ

 「嫌なことはさっさと忘れて、明るく生きよう」
という考えがないのは、東北全体のことらしいです(新潟市出身の同僚より)。
 確かに私も仙台と岩手に1回ずつ、長岡は2回行って(金沢も2回行きましたが、あそこはまた明るいので別)、寒い地方っていうのは人も自然も独特のものがあるなあとは思っていましたが、今回の会津でとどめを刺されました…
 さっさと忘れちまおう、というのは無責任な第三者、軽佻浮薄な東京人の言い草かもしれません。確かに、嫌なことは、やられた方は忘れられないし、忘れるべきではないかもしれません。でも、会津には「もうちょっと明るくなろうよ」と、本当に言ってあげたい…(ぶっちゃけ、いつまでも暗いネタが一番のウリでは、お金になりませんしね。)
 東京も、歴史で言えば都市としてのそれは会津とほとんど変わらずやっとこさ400年。しかし、実質上の首都として、この400年はまず三河からの移民、次いで日本中から流入した人間の寄せ集め。田村隆一さんの、「常に、古い田舎者が新しい田舎者を馬鹿にする土地」というのは正しくその通り。我が家も私でやっと3代目。
 その寄せ集めだからこそ、流行はすぐに移り変わり、楽しいことも続かない代わりに、哀しいこともすぐ忘れちゃったり、洒落のめしてしまう。落語なんかはまさに庶民のそういう気持ちから生まれたもので、哀しいことほど笑いのネタにすりかわり、お侍さんなんかのこともいつも笑いものにする。また、当時の長屋というのは実は現代以上に暮らしやすく、むしろ明治から戦前の一時期よりも現代に近いそうです(月末払いのキャッシュレスだったり、専門の洗濯女や惣菜売りが来るので、実は庖丁のない家がほとんどという、庶民の女性の暮しが一番楽だったし、男性も職人などは1日500円お小遣いを貰って仕事に行けば十分食えた、など)。寄せ集めだからこそもう初めから歴史がない。ないまま、「人の暮らし」をひたすらに最適化してきた。
 でもって、徳川様のお膝元なのに、庶民の誰一人「西軍出てけ!」とは言わなかった。永六輔『街 父と子』はこのあたりのことが書かれていて、「そーいやそーだ」と初めて気づきました。江戸っ子っていい加減ね〜。この本で、著者の父上忠順氏曰く、「東京が大変なことになっていても福沢諭吉は授業を続けていた」なんてのは肝っ玉が据わっていたのではなく単なる無責任だそうです (福沢諭吉は東京人じゃないけど)。江戸市中がこんなだと言うのに、多摩の方は天領の誇りとやらのせいか、某新撰組を作った人々が妙に盛り上がって京都まで行っちゃった。
 京都は逆に、1000年の都で、よっぽどヘンな動き(東京の真似をするとかヘンな建物を作るとか)さえしなければ、客の方から寄ってくるからプライドも高い。醒め切っている。仮に今の京都人のメンタリティが作られたのが応仁の乱以降としても、少なくとも600年は歴史があり、他の街が太刀打ちしようがない。幕末にも、天皇様がいらっしゃるので舞台になっただけで、市井の人々の9割は傍観してたんでしょうね。
 例が2つだけで恐縮ですが(幕末に京都と江戸と東北と薩長以外が何やってたか詳しくは知りませんので…というか目立つことはしてなかったから知られてないんでしょうが)、他にもこうしたいわゆる都市化した場所というのはいくつかあります。
 「高度な都市文明化」というのは、こうした、「すれてる、醒めてる、軽佻浮薄」といういい加減な面も含めたものですね。
 これが、とーほぐには一切なーい!!!!
 多分これからもありえなーい!!!!
 これには、恐らく気候も大いに関係しているんだろうなあ…
 偶々最近藤沢周平を読み直したり作者の人生を振り返ってみても、東北出身の人の作品を読んでも、東北っていうのは本当に「閉じっぱなしっぷり」が凄いなあと思います。メンタリティにしても食べ物の調理法ひとつにしても。
 思いっきり良く言ってあげれば真面目、悪く言えば何かあるとそのことに拘りすぎ。
 あ、それがそもそも会津藩の悲劇だったんだもんな(^^:)
 会津の悲劇っていうのは、元々の東北人の真面目な気質プラス正之ちゃんの家訓ですね。
 高橋克彦さんにしても、新撰組や幕末の歴史関連の小説で、根拠に一番信用がおける中村彰彦さんにしても、作品としてはエンタテインメント性というフィルタがある程度かかってるからいいんですが、実際はこういうメンタリティあってのものだろうなと思うと、やっぱり小説にとどまっていて良かったと思います。(高橋さんの『倫敦暗殺塔』は入手困難ですが傑作です。)
 同じとんでもなく哀しい歴史のあるところでも、沖縄だとまた違いますからね。
 沖縄は、空港で飛行機を出た瞬間に、空気がじっとりとあたたかく、毛細血管の先まで開ききる。黒っぽい緑。「なんごくぅ〜〜」と、手が踊り始める。「開ききりっぷり」が凄い。
 どっちが身体にいいかっつったら絶対後者だと思うんですけど(沖縄行くと、ホントに、「これじゃ長生き当然」と思います)、それも余計なお世話ですね…

でも!!

 東北には、そんな(無責任な都会人から見れば数々の)ミョーさに溢れていてもなお素晴らしいものがある!
 それは、当たり前だけど「自然」と「人」!!
 高く澄み切った青空を背景に、柿の木の鮮やかなオレンジ色。田んぼ。正に日本の田園風景。正に山下清安野光雅か!
 本当に東北の空は広かった。広さも色も東京の秋冬は及ばない。(ただこれ、東北でも太平洋側だからですが)
 美しい緑色の川、渓谷の絶景。
 どこに行っても、東京より一足早い紅葉は素晴らしかった。
 以前に仙台と岩手(一関)に行ったのも今ぐらいの季節でしたが、東北の秋はいいですね(真冬は…(--;))。
 これだけのものがあったら、どんなに寒かろうが暗いところにとどまり続けるメンタリティであろうが、東北の人は東北に帰りたがるのはよくわかります。
 「東武会津」のウリは「極上の日本」ですが、その「極上の日本」というのは、こうした貴重な、でも日本本来の自然のことだと思います。
 食べ物も美味しかったねえ。ラーメンは勿論(笑)、宿の夕食の、川魚のお造りも実によかった。会津牛とか馬とかも食べてみたかったなあ。
 そして、人がいい。
 AIZUマウントエクスプレスの車掌さんが既にすんごい栃木弁(栃木・群馬・茨城の無抑揚地帯か、それ以北の東北弁?)だったのにも驚きましたが、あの東北弁っていうのはつんのめるような早口で、慣れないとキョーレツです(^^;)。でも、宿やお店といったサービス業の人も、東京に比べると本当に丁寧ですね。東北弁が丁寧に聞こえるというのもあるし、本当にこの21世紀の世の中でもまだまだすれてない(確かに、会津まで行くだけで大変だから、まだまだ観光地とも言えない…他のお客さんもみんな東北弁で、南関東からの人がいない…)。
 この言葉とこの自然の中で暮らしていた人が東京に来たら、ホントに魂消るだろうなあ。東北の真面目な人たちよ、無理に都会に出なくていいよ、と心底思いました。都会に来ると、喜びも悲しみも一過性の、すれっからしになるよ!
 あと、温泉!宿の温泉が素晴らしかった。これは昨年の日光もそうでしたが、川沿いの温泉からの景色は素晴らしい。
 会津の東山温泉はオススメです。東北を代表する温泉地というのも当然です。
 相方も、「観光じゃなくて、宿泊を楽しむ旅行を今度はしたい」と言ってましたが、次回こそはどこか自然溢れる温泉に泊まるだけの旅もしたいものです。
 えっとまだあるので、続きは今日か明日。