吉行淳之介『贋食物誌』(新潮文庫)

 これも巻末の広告というやつだが、大当たり。
 先日書いた山口瞳さんの『酒呑みの自己弁護』の姉妹版、と言っていいだろう。そもそも同じ『夕刊フジ』の100回連載だから、同じ山藤章二さんの挿絵が、こちらは101点。表紙も山藤さんの面白い絵で、中身も、全く同じレイアウト同じサイズで挿絵が入っている。
 食物誌(但し贋)という通り、毎回のタイトルは「鶏」「鰻」「泥鰌」etc.…と食べ物だが、それはきっかけであって、中身は多岐にわたる。『自己弁護』に比べるとややエロ度高し、いや、酒の代わりにややエロが主、というべきだろうか。そこへ山藤さんのイラストが落としすぎず絶妙に効いている。
 いやとにかく楽しい。最近気分が沈みがちなので(…そうは見えんかもしれないが)、こういう楽しい本は、やっぱり読み終わるのが惜しくなるが、一気に読んでしまうものだ(一昨日読んでしまった)。
 いくつかのお店も出てくる。知らない店あり、知った店あり、特に、一度は行きたいと思っている森下のさくら鍋屋(当然「みの家」)にはまたもそそられた。同じく森下の泥鰌鍋屋(当然「伊せ喜」)、ここも行ってみたい。但し、泥鰌は、TVで見たのだが卵をつけてすきやき風の「伊せ喜」ではチョイと上品な気がする。「駒形どぜう」(情緒を味わいたい人は浅草本店がオススメ)で、葱がたっぷり乗っているのを小皿に取って唐辛子や山椒をぶっかけてわしわし食うスタイルの方がいい。
 そして、ある著者の本の広告繋がりということはそれだけの繋がりではおさまらないのも当たり前で、勿論ここ1週間ほどの本の著者はお互いの著書に出てきたりする。
 これも先日書いた安岡章太郎『快楽その日その日』には吉行淳之介が、『自己弁護』にも吉行ほか多くの作家が、『贋食物誌』には山口さんと安岡さんが…。でもって…。ときりがない。
 あとは次に続く。