明治の星―星新一の明治もの
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…と、某アニメのOPを思い出している場合ではない。
最近何読んだっけか。忘れたというより多すぎていちいち数えられない。
えー、まず、星新一。
ショートショートを面白く読み返したのは勿論、今回『夜明けあと』を読み直し、初めて読んだのは『明治の人物誌』。
つまりは、今回、
「星新一も、”明治もの”を持つ作家である」
ということを知った。
言い換えれば、彼には”明治もの”を書く必然性と魂(と書いて「たませえ」と読みたい)がある、ということだ。
この年になって知った、というのは恥ずかしいのだが。(まあ昔読んでても理解できなかったろうから…)
詳しくは『夜明けあと』での見事な時代批評、そして、全ての人間が父・一と関わりを持っている―というより、そういう人選をした―『人物誌』を読んで頂きたい。
彼には、山田風太郎のような天才的な物語創作のパワー、あの時代を理解し心を砕き、かつ一枚人を食ったようなところともまた違う、正に血が呼ぶ必然性があった。
父はいわき市の出身、母方の祖父・小金井良精は長岡市(!!!)の出身。そのことをあらためて読むと、この地域の悲劇を知る者としては、え、この人も!と驚き、そして心に響く。
自分の身内のこととして、彼にとってまだ幕末や明治とは実に生々しいのだ。幕末とは父祖の地が苦しんだ時代であり、明治とは、父が生まれ、その後の時代とは、政治的陰謀で社会的に抹殺された時代だった。
そのへんが可哀相で、未だに、『人民は弱し官吏は強し』や、『明治・父・アメリカ』は読めないでいる。
父・一の悲劇についてはエッセイのあちこちでも語られているし、まずは『人物伝』の、特に野口英世の章を読んで頂けると、星新一の静かにして執拗な怒り(でも当然だと思う)が見られるはずである。
昨年丁度会津に行ったところだし(「野口英世プリント電車」とか、あったなあ)、このへんの地域の歴史ってのはやっぱりまだ色んな人が色々言いたいことを抱えているんだなあと実感もした。
星家の系譜。
例えば、自分の家の歴史が、有名な人物の伝記からはとことん抹殺されている事実。
あるいは、政治の都合で、政治家が、無実の父に罪を着せた裁判。
…と書くと、星新一ってとてつもなく暗い人なのね、と思われかねないので思い入れたっぷりな表現はこの辺にしておく。
星作品でも、明治という時代の見方は、絶対に歴史で習っただけで終わらせてはいけないのである、ということをあらためて思うとは…
明治とはまだまだつきまとう。歴史的評価などまだまだできない時代だ。
星よ!たませえを感じたぜ!
これら明治ものも、ショートショート同様、一見シニカルなだけに見えるところに騙されてはいけない。
何か可哀相な話だということで、実は未だに読めてない1冊。
人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫) | |
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小金井良精も、考古学の授業で「日本人アイヌ説」を習った身としてはちと気になるお人。
ただ、森茉莉さんはエッセイで、星さんのこの伝記は、森家の人間を事実以上に悪く書いている、と不満に思っていることを明らかにしている(小金井良精の妻が森鴎外の妹なので、森さんから見て星さんは叔母の孫)。森さんに言わせれば小金井氏の方がよっぽど変わった人だったんだそうだ。
祖父・小金井良精の記 上 (河出文庫) | |
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祖父・小金井良精の記 下 (河出文庫) | |
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