清水義範の各論
えーと、沢山読んだんだけど特に印象の強いものを。
『偽史日本伝』
これ、むしろ授業でつまらん思いさせるより、小学生中学生に読ませたら、歴史好きが増えるねえ。
邪馬台国、大化の改新、義経と弁慶、…といった、かなりメジャーなネタを持ってきて何でこんなに笑えるの。
古代史好きの私としては、個人的には大化の改新ネタ「大騒ぎの日」が最高。蘇我入鹿暗殺当日に、ワイドショーというものがあったら?
後の方になると、『風雲児たち』でもおなじみの面々も出てきて、これまたそのへんが好きな人にはたまらない。
そういえば、私が初めて清水さんの本を読んだのは、傑作パスティーシュ『世界文学全集』と、『バラバラの名前』と、『主な登場人物』だった。この人の文学と歴史の見方書き方は、むしろ「立派」という評価を得ている作家が逆立ちしても無理ですね。
この『偽史』と関連して、『開国ニッポン』も必見。
もし、英明な徳川家光が鎖国をしていなかったら?
江戸時代のこういうことはこういう風になっていた、という仮説物語でもあり、しかしそれが現代ニッポンでもどこかで見たような光景でもあるという、風刺とパロディ満載。
そして、それでもやっぱり幕府は倒されちゃうのである。何でそうなるの?『偽史』の最後の方に入っている「どうにでもせい」と比べてみても面白い。
『ニッポン蘊蓄紀行 銅像めぐり旅』
これ全然エラそーな蘊蓄話じゃないので安心して下さい。
奥さんの下調べを基に、全国いくつかの有名人の銅像(そりゃ有名人じゃなかったら銅像ないけどね(笑))を見、その街を歩く。
よく考えたら、銅像が建ってるような人の中に私が好きな人はいない、つまり、銅像になってる奴に限って私の大嫌いな人ばっかりなんだけど(嫌いじゃないのは太田道灌ぐらいか)、その像についてのエピソードや、町の人間性が実に要領よくまとまっていて面白かった。
こりは、実におすすめの本です。
面白いので、信長は嫌いだけど清洲とか行ってみたくなりましたね。
ちなみに、こないだ大学病院で読んでました。
8時間待ったんで、横溝正史を1冊と、清水義範を4冊読みました。
あと、『まちまちな街々 ニッポン見聞録』は、この『銅像』の取材も生かした、フィクション仕立ての半ノンフィクション。姉妹編という感じでしょうか。
『お金物語』
これも病院で読んでた本。
お金とか、サラリーマンとかの日常を(しかも何のヤマもないストーリーなのに!)面白く書いて読ませてしまう清水さんですが、この本は特に、人生の様々な場面における「お金」にまつわる悲喜劇(多くの場合悲劇と喜劇は同時にやってくるということをこそ書いているのかも)がもう上手すぎてたまらん。
そうそう、そうなんだよなあ、結局はソコ。みたいな。
えー、サラリーマン系というか、日常リアル系だと、他に『柏木誠治の生活』、『人生うろうろ』とか、もうとにかく面白いですね。何でこんなに面白いんだろ。
あー、きちんとレビュー書いてなくて、どの短編がどの本に入ってたかすぐには思い出せないのが口惜しい。
あ、『スシとニンジャ』もよかったなあ。