平岩弓枝『平安妖異伝』『道長の冒険 平安妖異伝』
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さ・わ・や・か〜(笑)
いや、今まで平安物ってほとんどトガちゃん(富樫倫太郎)のドロドロドロドロでしか読んでなかったから余計そう思うのかもしれないけど(笑)
常に涼しい風が吹き渡っているような、そんな爽やか〜な平安物ですね。
まだ道長が政権を取るずっと前、父親が死んでまだ長兄のところに権力があるあたりです。道長は若く真面目な貴公子として描かれていますし、既に娶った2人の妻にもなるべく平等に接するという「まめ男」。
そんな道長が、偶然、異国の血を引く、あらゆる楽器の名手である少年・真比呂と出会い、数々の怪異に立ち向かう―――と言うといかにも平安でバスターな話かと思われますが、そこはそこ、あくまで爽やかに品があり、何となく全体が花霞に包まれたような、美しい物語でございます。
ただ、冒険記的な連作短編である『妖異伝』の最後の方で、道長が愈々「この国に害をなす」ラスボスとの戦いを決意し盛り上がったところで(解説者も大いに期待していた)、続編『冒険』に入るとテイストが変わってしまう。こちらは長編で、真比呂(実は神の子らしい)はいきなり敵方にとっつかまっていて、道長がそれを助けに向かうのですが、どうもストーリーがいきなり観念的になってしまっている。真比呂の親の世代(このへんがラスボスではあるんだけど)の愛憎の物語。戦いの中で、道長も自らの愛情生活を振り返る。内容としては前作より深いのはわかるのですが、前作から想像していた続きとはなーんか違う。で、最後まで読んでも、果たしてこれでシリーズが終わったのかどうかも何ともわからない。(どうも終わりらしいですね。Amazonレビューにも「不完全燃焼」という感想が。だよねえ!)
結局この冒険を通して、史実の道長はどんな影響を受けたのか、そのへんも、前編ラストで期待させておいて、明らかになっていない…
うーん。ストーリー的な評価は微妙なんですが、ひとつひとつのエピソードはすごく女性らしいというか、静かにじわじわ来るようなものです。特に、神主の娘で、和楽にとても造型の深い著者らしい、音楽と人の心の関わりについての表現は素晴らしかった。私が今まで漠然と考えていたことにもきちんとした言葉が与えられたという面もあります。
それだけに、ちょっと、2冊というのは勿体ない…まあ2作目をあそこまで抽象的にしちゃったら確かに書きにくいかもしれないけど…
で。
これの直前に、偶然、『天皇たちの孤独 玉座から見た王朝時代』(今年の新刊)という、まさにこの摂関時代の天皇たちの悲劇を扱った本を読んだのですが…
著者も言う通り、平安時代とは正に貴族の時代であって天皇の時代ではなかったですね〜。むしろ、天皇家、とことん虐待されてますね〜(^^;)
道長なんてえっれえ極悪人の親玉ですね〜(^^;)
ま実際、歴史的には、本当は一番偉くなきゃいけない天皇家がここまで虐待されてたとなると、悪い奴ってことになるんでしょうなあ(著者もやや天皇家寄りすぎる感じはしますが)。
平安時代も、よくある陰陽師だあ何だのファンタジーなんぞ持ち出さなくなって、史実が十分ドロドロっすよ。あ、ドロドロなのは古代から一緒だ(笑)(但しあっちの時代だと天皇家の中でドロドロしてたんだけどね)
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