同情するなら香りくれ!―「パフューム ある人殺しの物語」

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 大好きなお話ですね〜。原作は、内容としてはすんごいグロでもあるのに寓話的にさらりとしていて(こういうセンスも持っているのがドイツ人ってことかな?)そこがいいです。
 で…
 映画は…
 あれ?見たの3月末だぞ?
 …公開自体もうそろそろ終わってないか????
 すいませんレビューが遅くなりました。
 映画公式サイト
 http://perfume.gyao.jp/

 映画版の結論。
 「頑張った。けど、結果的にすんげえよくある話になってる。」
です。
 
 違うんだっ。違うんだっ。グルヌイユ君は愛など求めていないのだよ。
 グルヌイユ君は、確かに原作でも、最初に彼が匂いを求めた女性をうっかり殺害してしまい、以後、「死体からいかに完璧に匂いを収拾するか♪」に取り憑かれてしまいます。
 でも、映画では、最初に殺した女性は、「彼が最初に匂いから好きになった女性」であり、「以後の連続殺人はその匂いを再現するため」になっております。
 これ、映画的に話をまとまりよくするための改変ですけど…結果的にこれが原作での寓話的なよさを根底からひっくり返しちゃいましたね。
 ただの、「やっぱり愛が欲しかった殺人者」話になってしまいました。
 あー。
 あー。
 原作ファンとしてはどーしても納得がいかないー。

 しかし。
 映画単独で考え、原作とちらと振り返るという形であれば、十分満足のいく出来であります。
 凄いもん。根本的な改変を除けば、映像的には、よくここまで再現したなと。そう、映像的な再現という意味では、正に満を持して、原作刊行から20年近くを経た今になって実現してよかったなと思います。
 衝撃のラスト―これは事前の宣伝などではアノシーンと思われてますが、その後にまだ本当の衝撃があるのですよ―がホントーにそのまま映像になっていたのには、自分が作ったんでもないのに、「してやったり!!!」とニヤニヤしてしまいましたからねえ。
 だから、話はよくあるパターンになっちゃってるけど、確かに絵面の上では、観た人を呆気に取られさせる力はありましたね。原作知らない人は、まず「何だったんだこの映画は!」と思うでしょう。で、ちょっと考えるでしょう。その後すっかり忘れたって構いません。できれば、原作を手に取って頂けると私は嬉しいです(文庫本の表紙が映画バージョンになっちゃったのは残念だけど)。
 音楽も、流石ベルリン・フィルちゅう感じで、映像に負けずにピタリと来てましたねー。(指揮者のラトルについてはあんまし知らないのですが…)

 グルヌイユ君役のベン・ウィショー。「新人で、かつ存在感がある」という難しい要求に応える新人。原作よりもなかなか可愛らしいおのこでございますが、よろしいですねえ。
 SGA851様は「岡村似」と仰ってましたが(確かにそういう系統ではある)、私には…
 草野正宗にしか見えんかった(笑)
 いや!ホントに!スピッツファンには彼にしか見えないって!
 で、あんなに母性本能(というものは本当は存在しないのですが)に訴えるタイプなのに、「体臭がない」ということで悩んで殺人を犯してしまう。
 原作とは全く違う「グルヌイユ君の楽しみ方」がございます。
 (SGA851様のレビューは、http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/03/post_4555.html)

 しっかし…
 今回も戸田御大の字幕はひどいねえ。
 「ロード・オブ・ザ・リング」の時もそうだけど、この人、マジで意地でも、「原作を1文字たりとも眼にしない」っていうポリシーがあるんじゃないですか(笑)
 前半で登場する香水「アモールとプシュケ」を、何がわざわざ「愛と精霊」ですか(爆笑)
 あれは、神話の人名そのまま、つまり「アモールとプシュケ」のままでいいんですよ(確か原作の邦訳でもそのままだったはず)。それをねえ…何でわざわざ、訳して意味を書くかなあ。わからないお人です。
 まあ基本的に今回の映画もイギリス人出演者が多く、私はイギリス英語の方が聴き取りやすいので、字幕がこの人とわかった瞬間に、字幕を信用するのはやめて聴いてましたが(これは「パイレーツ・オブ・カリビアン」でも同じですが、パイレーツの場合台詞自体がそんなに込み入ってないから字幕のボロも出にくいんだけどね)。
 
 まだお近くで公開してて、興味がおありの方は、是非是非スクリーンでお楽しみ下さい。

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