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 石毛直道『鉄の胃袋中国漫遊』(平凡社ライブラリー)
 鉄の胃袋中国漫遊
 一昨日読了。書こう書こうと思いつつ放置。 
 「鉄の胃袋」ってのは、確かに中国人って鉄の胃を持ってるよなあ、と思っていたのですが、よく考えたら石毛さんのニックネームでした。そう、本当に中国で食べて食べて食べまくるのです。
 よく、食べ物の本について、「読んでるだけでお腹一杯になる」というありきたりな表現がありますね。
 でもこの本は確かにその通りだ(笑)
 漢字オンリーの料理名の羅列(勿論そればかりじゃないけどね)に何度も目を通しているうちに、まずは目がチカチカしてきて、そのうちにお腹が一杯になって、最後には口の中が油っぽくなってくる(すいません)。
 この本の当時はまだ中国観光も今ほど自由ではなくて、中国が「見せたい店」でいいものを食べるか、石毛さんのように苦労して一般家庭でズビズバ食べさせてもらうほかなかったそうです。この一般家庭の料理っていうのが、我々の基準からすればさほどバリエーションはないように見えますが、できたては美味しいだろうなあと思うごく普通の炒め物やお粥です。
 勿論凝ったもの、変わった材料の料理も沢山出てきます(写真豊富)ので、中国料理好き、家庭料理に興味があるという人も楽しめるんじゃないでしょうか。
 あと、この本に出ていて、行きたいなーと思ったのは、上海のお茶屋さんというか点心のお店。さっぱりしたものが美味しそう。
 私が北京に行った頃は漸く観光が普通になっていて、食事も全部ついていたツアーで、食べ物の感想としては、
「いくら中国で食べても、大量に作る分にはCookDoと変わらんなあ」
でした。観光客向けにまとめて作れば、やっぱり最大公約数的な味になるのは仕方ないかと。(これは中華街でも同じで…)
 でも、違和感がないという意味でも、普通に美味しいという意味でも不自由しなかったし、とにかく量が凄かった。「相手がギブアップして残すまでお代わりを持ってくる」という習慣(家庭科の授業で聴いたんだっけ?)は事実だと思いました。ツアー旅行で食べ物の「量」に満足するって、後にも先にもあの時しかなかったですね。尤もそれも、観光ズレしているであろう今の中国では、ごく普通の量になり下がっているのではないかと思いますが。
 一番美味しかったのは、これはこの本にも『食味風々録』にも出てきていて、その感想に書こうと思ってギブアップしてしまったのだけれど、「薄餅」だったか(中国では「餅」は小麦粉を使ったものを指す)、薄く焼いた皮のようなもので具を包んで食べるもの。
 米文化ではなく粉文化の北方の料理のようで、私も北京郊外の「明の十三陵」見学(つっても見られるのは博物館になっている「定陵」のみ)の日に、陵の近くのレストランで食べました。鶏肉と野菜とナッツの炒め物とか、素朴なんだけど味はすごくいい料理がいくつか出てきて、最初はそのまま食べていたのですが、途中で「皮」もあることに気づいて、包んで食べました。でもこの皮が結構小さめな菱形に切ってあって、一生懸命包んでみたところでせいぜいワンタンぐらいの大きさなんで、ちと不思議でした。こうじゃないのもあるんだと思います。とにかく、北京の街なかのレストランよりこの郊外の、土着料理っぽい店のこの料理が一番美味しかった。
 元々私はシンプル系の「餅」が好きで、実はこないだも「花巻」(強力粉をイーストで発酵させ、蒸した具なしのマントウ)を1人で作って食ってた(笑)。要は肉まんあんまんの皮の部分。そのままでも具を挟んでも美味しいです。バー○ヤンでもつい頼んでしまうのがコレ(笑)←ここでも十分美味しいと思う私の味覚は、信用しないで下さい。
 森枝卓士『世界お菓子紀行』(ちくま文庫)
 世界お菓子紀行
世界お菓子紀行

 そんなに「世界」かな?まあいいけど。正確には、アジア、日本、ヨーロッパあたりですかね。
 そもそも、「お菓子」の定義とは何ぞや?という疑問から始まり、あれこれと食べてみる。特に、「菓子パン」というものがお菓子と食事の境目を曖昧にしてるし、じゃあスナック(軽食)とお菓子ともまた何が違うのか。
 で…結論らしい結論はやっぱりないのだった。
 お菓子が好きな人は写真も沢山出ていて楽しいです、という非常によくあるおすすめに落ち着いてしまいます。
 面白いのは、日本以外の国では、「男の癖に甘いもの好きなんて」という感覚がないというくだりですかね。フランスなんかじゃ朝から男性がケーキとか食いまくってるのは普通だし。
 最近は日本でも、男性の方がむしろ堂々と甘いものを食べているようで、悪くないですね。コンビニで売れるスイーツは実は半分以上が男性のお客さんだそうですし。
 とすると、女性が男性の目を気にしつつ甘いものを買うほどには、男性は、甘いものを食べる女性なんて気にしてないってことかも。いーじゃねーか、みんなで甘いもん食おうぜ!
 実は日本でも、様々な日常の儀式習慣における「酒」と「菓子」は辛党・甘党として対立するものではなく切り離せないものである(結婚式のケーキと乾杯、お葬式の宴会と饅頭etc)、ということを指摘しているのも鋭いですね。
 この人、真面目に食い物について語るより、こうした割と表面的な本の方が、鼻につかんでいいわ。