子供は寝てなさい―「アポカリプト」

 (ストーリーの細かい点に触れてはいますがネタバレはしてないつもり)

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 えー、この映画を一言で言うと「血しぶき」です。他の何でもなく、血しぶきです。
 故に、流血、半裸(全裸でなければ半裸と表現するようですが、あれは「ほぼ全裸」)の人間しかも9割男性、プリミティヴな(故に当たると物凄く痛そうな)武器、人身犠牲、ジャングル、ヘビカエル猛獣などが駄目な人は見るのを避けましょう。これらに当てはまらなくても、食事中、妊婦、産前産後、及び子育て中の方は自己責任でお願いします。
 あと、学問的正確さを求める人も×かな。私も結構求める方なんですがガマンガマンで。
 人間の心臓を神に捧げるのはマヤじゃなくてアステカだしー!(笑)。マヤは「帝国」とかじゃないしー!
 そもそも、ラテンアメリカ古代文明に何の興味もない人もパスした方がいいんですが…ホントに、この文明のファンじゃなかったらどーして観る気になるんだ?メル・ギブソンの大ファンか。はてなキーワードをクリックすると、「大ヒット」って書いてあるけど、日本ではさほど話題にならなかったような…。撮影は大変だったと思いますけどねー。
 わざわざ映画館まで観に行かんでよかったわ、色んな意味で(笑)
 残酷なのは…まあガマンして観ましたよ。ストーリーは公式サイトとか、SGA851様のレビュー(http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2007/06/post_2b3a.html)で知ってたし。わが闘争ならぬわが逃走、自由への逃走。ある日突然都会者の軍に村を襲われて捕まり、連行されて生贄にされそーになった、やたら足の速い主人公―そりゃ名前が”ジャガーの足(ジャガー・パウ)”ですから―が、妻子と再会するために逃げる!逃げる!逃げる!MASTERキートンか冒険野郎マクガイバーか!ばりに逃げる!
 …逃げ出すまでが長いんだが…
 観始めて8分で、「このノリで2時間17分かよ…」でしたし、丁度そこで子供が起きて授乳して寝かせて、まーだ逃げんのかよと思いつつ、件の残虐シーン(とてもここでは申せませぬ)。いい加減そろそろ逃げるだろと思ったら、このシーンでもまぁだ逃げない。ともするうちにまた子供が起きて、首は飛ぶ首なし死体は転がるの(申してるじゃん!)には「あーあーあーあー」と思いながら一旦DVDを止め、丁度子供が便秘してるので押さえつけてカンチョーなどし、成功しておむつを2回替えてやっとこさ再開。えー、それからもうちょっとしてやっと脱走。
 まあ、逃げ始めてからはドキドキでしたけどね。
 色々かなりウゲーなシーンもありましたが。(結局子供を抱っこして観た)
 走る〜走る〜俺だ〜け〜♪
 果たしてジャガー君は無事に村に帰って妻子と再会できるのであろーか!? 
 ラスト10分だけ子供が寝てくれて、「ぬおー」と手に汗握り(ものの喩えです)、オチには驚きましたけど。
 とまあ物語はここまで。
 色々疑問はあるっすね。大人は男女問わずひっくくって連行するのに、何で子供は置いていくんだ?とか。子供はそのままほっといても生き延びた連中でまた子供を作って、新たな捕虜候補ができるからかな(猟をするのにメスは殺さないっていうアレかい!)。ジャガー君が逃げちゃった後、残りの生贄候補の皆さんはどーなったのかなー、とか。
 マヤであろーがアステカであろーが、かなりリアルに描いちゃってますんで、文明はともかく、風俗習慣はあれが全部本物だと思っちゃう人もいるんではないだろーか。生贄の儀式は本当にああいう感じだったらしいんですけどね。全編マヤ語!っていうのも、ようやったなーとは思います。でも、ホントに生贄は青く塗っちゃうの?余った捕虜はホントにああやって殺したの?そもそも何で生贄は男性だけで、女性は奴隷として売り飛ばすの?(流石にこのへんはハリウッド・コードか?)、などなど…全部にツッコんではいけませんですね、ハイ。
 ジャガー君を追っかける資格があるのは、敵の大将だけなんですよね。あの人が実は一番可哀相かもね。(多分)国のために頑張って1人でも減らさないように捕虜を連れて帰ってきて、うっかり余ったからああいうことになっちゃって…
 あの滝のシーンでは、漢!なのはジャガー君ではなくて、大将の方だと思いました。
 あとカワイソーなのは、”のろま”君だっけ、あれどう見てもトウガラシだよな、と思ってたらやっぱりそうらしく、結局あのイタズラのせいで、この世で最後の奥さんとの夜にヤれなかったんでしょうね〜(でも、彼がナニを冷やしているのはわかるけど、奥さんは何でうがいしてるんでしょうか(キャッ))
 あー、あの、奥さん、陣痛始まってからあんなに早く生まれませんよ(笑)。昔の人は身体鍛えてるから安産そうなのは確かだけど(笑)。
 うーん結局、ようわからん映画だった(笑)
 冒頭に出てくる言葉、「文明の崩壊は内部崩壊から始まる」とか字幕がついていたけど、もうちょっとはっきり意味をほじくれば、「どんなに素晴らしい文明でも、それが内部から崩壊し始めた時は、それをとどめようがない」ということ。でしょう。
 でも、メルさんはこの映画で何を言いたいのかなぁ。マヤ、正確にはアステカ、ってもういいや、架空のラテンアメリカ古代文明は、架空のスペインがやってくる前に既に崩壊を始めていた、ってこと?ジャガー君の家族愛の強さと執念の素晴らしさ?仲間との友情?
 脚本は及第点(伏線の張り方なんか、なかなか「おお!」と思いました)だし、カメラワーク、殺陣、演出、といった技術的な部分では十分”よくできたハリウッド映画”なんですが、ただ、製作意図だけが不明という(笑)。結局、味付けに騙されてはいけない、リアル残酷系アクション映画ってだけでしょうか。
 結論:いつの時代も、甲斐性と精力のある男が一番。
 そうそう、ジャガー君、よく似た女優さんがいまして、「誰だったかな〜」と思っていたのですが、半分ぐらい来たところで思い出しました。ミニー・ドライヴァーです。