ローレンス・ブロック、田口俊樹『殺しのパレード』(二見文庫)

  殺しのパレード (二見文庫 ブ 1-19 ザ・ミステリ・コレクション)
殺しのパレード (二見文庫 ブ 1-19 ザ・ミステリ・コレクション)
 詳しくは明日。
 というわけで12/18。
 ”殺し屋ケラー”シリーズ第3弾。なのだが、次の『Hit and Run』(米国でも未刊)でこのシリーズは終わってしまうらしい。
 以前にも書いたが、ローレンス・ブロックのシリーズでは一番好きなのに…
 しかしブロックも来年70。80過ぎても分厚くてバリバリのミステリを書いているP.D.ジェイムズのような怪物おばあちゃんもいるけれど、70といえば、作家としては、脳味噌は衰えなくても体力がきつい時代になるのだろうか。 
 そういえば、昨年だったか、エド・マクベインが死んだ。87分署シリーズは、完結という形にはならなかった。元々、主人公格は一応いるものの、警察小説であり、始まってそのまま書かれて、作者の死で単に新作の刊行がストップ、という形である。まあそれもよかろう。初めからどういう形にするかという予定はなかったのだろうから。
 ”マルティン・ベック”シリーズは、初めから「10作まで」と決めて始まったものであり、第10作刊行直後に、著者夫妻の夫の方が亡くなってしまった。事実は小説よりである。
 そして、ブロック作品は―――アル中探偵マット・スカダーは『すべては死にゆく』(読んだのだが集中でして読めなくて内容をよく憶えていない)で終了らしいし、ケラーは上記の通り、短編集は『殺し屋』『殺しのパレード』、長編は『殺しのリスト』と次回のHit and Runで終わり、とすると計4冊である。もっと読みたいのに!そして、”泥棒バーニイ”シリーズだけは今のところ終わりが見えていない。まあケラーものも、訳者によれば、内容からすると終わりそうだが未定だし、もしかしたら続くのか。今のところバーニイのみは継続濃厚。
 死ぬまで書くか?責任の持てるうちに全てのシリーズの風呂敷を畳むのか?
 さて、今回の『殺しのパレード』である(第1作がHit Manである他は、第2作がHit List、第3作がこのHit Parade、そしてHit and Run…と、タイトルが音楽用語などに引っ掛けてある)。
 ブロックらしく皮肉の効いたテイストが、ケラーがいかにあっさりすっきりクールに殺すか、にのみ繋がっていた第1作からは随分歴史を感じるほど、どうも、仕事にケチがつきまくるというか、ストレートにいかない。第2作は長編で、やや結末は肩透かしながら、普通にハラハラドキドキであるのだが、この第3作になると、依頼人を殺す羽目になったり、途中で計画が変更されたりと、まっすぐ行かないのである。まっすぐ行かなければそれだけ危険も増す。一体何なんだ?という、ケラー自身と同じような、狐につままれたようは状態で1冊終わる感じである。短編集というよりは、1作1作も中篇に近いような長さで、その分読み応えはあるのだが、どの話も読み終わって余りスッキリはしない。
 ケラー自身、死後の手配のことまでドット(第1作では元締めの娘、第2作以降元締め。ケラー以上に皮肉好きな中年女性)に話すなど、何やら不穏な雰囲気は増すばかりである。
 しかも、訳者あとがきによれば、第4作ではとうとうケラーは初めて追われる身になるそうだ!
 あああ、飢えが満たされるはずが、却って第4作を待ち焦がれるようになってしまった。でも本国で未刊なら邦訳は何年後になるのか。田口さん、せめて翻訳作業は猛スピードでお願いします。