12/20〜21

 ワニのあくびだなめんなよ
 さて、先ほど「カレーを食いながら読む」と書いた、椎名誠『ワニのあくびだなめんなよ』(文藝春秋)である。あ、ものを食いながら本を読むのは私の最大の習癖であり、何もこの人の本を軽視しているわけではないので悪しからず。いやむしろ非常に楽しみにしている作家だ。
 実は、カレーを作る前にシャワーを浴びた。しかし、シャンプーをして、2度洗いしようともう1回シャンプーを手に取ったところで……何やら声が。
 まさかな、と思いつつも、シャワーを止めると…やっぱり。子供が泣き喚いている。
 朝まで寝入ってくれるのか、30分かそこらで起きてしまうのかは、30分かそこら経たないとわからない。だからこんな日記など書いていないでさっさと風呂に入ればよかったのだが、そこはそれそういうわけにもいかない。
 起きてしまう時は大抵ぴったり30分で起きる。子供が完全に寝入るまでは30分かかるそうだから(子供のレム睡眠とノンレム睡眠の周期は30分なのだそうだ)、その完全寝入りばなに何か怖い夢でも見るのだろうか。しかし以前相方が言っていたように、
「この子は、まだ、ぞーうさんもきりーんさんも知らないんだよね。一体どんな夢を見るんだろう」
である。
 この時分の子供にとって「怖い」夢とは、私に怒られることぐらいではなかろうか…と思うと非常に申し訳ない。
 さて、仕方なく風呂を出たわけだが、ここで焦ってもしょうがない。焦ったところでせいぜい1分2分の違いだ。風呂場に入った時は泣いていなかったのだからそんなに前から泣いていたわけでもない。自分の方の準備もそこそこに次の行動に移って、「自分が犠牲になった」と思ったら、いつか絶対に子供に当たってしまう。ので、髪を拭き顔に化粧水のスプレーなどもかけ、服を着て子供を見ると、案の定、
「ドウナッテルノヨココハダレワタシハドコタスケテタスケテ」
という、いつもの「30分起き」の顔で見上げてくるので、ここは落ち着いて宥めなどし、作っておいたミルクを飲ませる。さっきはハンパに飲んだところで眠さの余りオチてしまったので、またハンパに腹が減ったのだろう。またちょっと飲んで、今度は「本気寝」らしい。
 そして仕方なく、もう風呂は諦めてレトルトのカレーを食いなどする。風呂は明日相方がいる時にでも入れるが、今日の夕飯は明日食ったら明日の朝食になってしまうのだ。
 食いながら読む。繰り返すがこれが人生最高の楽しみである。食うと読むとは私にとって唯一(二)の道楽だから、いっぺんにやるとなおいいのである。
 さてこれで何が本の話かと言うと…うーん。いつもながらこのシリーズは面白いなあ。『週刊文春』に連載している「新宿赤マント」の、もう何冊目になるか、である。現在は、新宿を拠点をしていない?のか、連載タイトルは「風まかせ赤マント」となっている。この巻によれば、浮き球野球の「新宿」のチームから戦力外通告を受けたそうだが、それも関係しているのか?(笑)
 それはともかく、タイトル通り、毎度毎度、ほぼ旅の空での楽しいエッセイである。
 この人の文章というのは、ご本人も自覚している通り・・・と言ってしまっては申し訳ないのだが、確かに、華麗な表現テクニックがあるわけでも物凄い構築美な文章でもないのに、物書きとして最も重要な部分が圧倒的に優れている。その部分とは何かと言えば、流れのよさ、読みやすさだ。この人の小学校6年生の頃の作文というのがとある雑誌の別冊版椎名誠特集に載っていて読んだのだが、この歳にして既に椎名誠椎名誠だった。華麗ではないが的確な表現力があり無駄がなく、ラスト一行がやや演出臭いけれどそれがやけにプロっぽい。その衒いがガンガン抜けて今の文章になっている。
 えーと今回のトピックスは…
 旅の宿で2夜連続で幽霊に遭遇した話。1人で読んでいる時にこういう話はやめれれれれれれれれ!!!!幽霊系にはめっちゃ弱いのだ。背後が怖くて仕方ない。実際には背後では子供が寝ているだけなのだが(本当に寝入ってしまえば人がメシ食ってよーがTVつけてよーが全然平気である)。
 と、結局何が本の感想なのだかわからないが、今回の文章は何となく椎名誠っぽい感じで。