『現代詩読本 田村隆一』(思潮社)
田村隆一 (現代詩読本・特装版) | |
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この詩人との出会いはクリスティー作品の訳者としてだ(それから『我が秘密の生涯』の(笑))。勿論ロアルド・ダールの翻訳者としても有名だ。そして詩人として再会した頃、例の『チョコレート工場の秘密』の翻訳問題(過去記事はこちら)が起きていた。まあこれについてはここでは述べない。
ともかく、この人の詩が好きだ。私の好きなものは、詩であれ歌詞であれ文章であれ音楽であれ何であれ、しみったれていなくて都会的で、貧乏臭くなくて、からっとしていてオシャレなもので、わかりにくさを高尚さなどと勘違いしていないものだ。とにかくじくじくじめじめしてたり、1人で悦に入っているようなものが死ぬほど嫌いなのだ。(詩人でいえば他には立原道造もいい。)
いかなる条件
いかなる時と場合といえども
詩は手段とはならぬ
君 間違えるな
(「西武園所感」)
なるほど田村さんは江戸っ子だ。道理でカラリとしている。金はなくても決して貧乏臭くない。おまけに晩年住んだのが鎌倉だったというところまで私のツボだ。ついでに、学徒出陣した先が海軍だっていうのも。
些細な自分の好みとの共通点を挙げているだけだと言われるかもしれないが、まず好きになった作品を書いた人のバックボーンが、本当に自分の好みの通りだったとわかるのは嬉しく、やはり出会うべくして出会う人だったのだと再確認できるのである。
そもそも、小学生の頃からクリスティーの訳者として知っていながら、この人のエッセイや作品を読んでみようと思ったのは、30を過ぎて都築道夫さんのエッセイによってだった。それらには、早川書房時代の田村さんのことが色々書いてある。田村さんからポケミスを引き継いだのが都築さんである。都築さんといえば正岡容の(些細なことで破門されるまでは)最後の弟子である。正岡さんといえばこれはもう落語である。桂文楽(言うまでもないことだが先代の8代目である)である。何と田村さんの結婚披露宴には文楽が「明烏」(!)を演じている。その他、その他。
また、今回の本には、私の好きな倉橋由美子さんの文章も載っている。
私の好きな人々の若き日に大変な衝撃を与えたのも田村さんである。
とまれ、つまり、落語やらミステリやら私的ツボにとめどもなく繋がってしまうのもこの人である。詳しくは、田村さんの作品をいくつかとエッセイ、都築さんのエッセイを一通りと、落語に関する本でも何冊かひもといて頂ければいいだろう。ここで詳しくどれとどれと書く暇も義理もないのが残念だ。
結局のところ本というのは興味つながりでリンクしてどんどん読んでいくととめどもなく網目のようになっていく。その網目の中の、かなり多くの糸をひきつけている1人だと言えるだろう。
チョコレート工場の秘密 (児童図書館・文学の部屋)
『詩人からの伝言』
田村隆一全詩集
この『全詩集』はここで読めてしまうのだが。
最後の詩集。
詩集 1999