4/8 玉木正之『京都祇園遁走曲』(文藝春秋) 

京都祇園遁走曲 (文春文庫)
京都祇園遁走曲 (文春文庫)玉木 正之

文藝春秋 1996-04
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 スポーツライターとして有名な著者の、連作短編集。
 もう大分前で、私も見てないのですが、NHKドラマ新銀河「京都発・ぼくの旅立ち」(1996年)の原作。
 …えっ?
 これ。
 普通にすんげえ面白いんですけど?
 この方、ふつーに作家じゃいけないんですか?あなたそんなにスポーツライターやりたいですかっ!?…そうですか。いやそりゃ残念です。
 …というぐらい、面白かったのでした。
 いやこの方とは、実はもう10年ほど前、某横浜にあるプロ野球チームの学生モニターをやっていた頃、『ベースボールと野球道』という新書を読んでものすごーく勉強になったという出会いが。その時も、すごい人だなあと思ったんですよ。
 ベースボールと野球道―日米間の誤解を示す400の事実
ベースボールと野球道―日米間の誤解を示す400の事実
 勿論、この方、祇園育ちであります。なので、主人公・新吉の、祇園に対する思いは、ほぼそのまま著者のものと思ってもいいのではないでしょうか。
 祇園。色っぽい街。でも、家の中のことまで全部近所に筒抜け。ちょっとつつけば子供の世界にも大人の複雑な事情がどばっ。
 はあ祇園って、京都って大変ネエと、ようよう東京に住んで3代目のワタクシですが思うのであります(笑)
 ちなみに、ドラマの方の主演は茂山宗彦さん。ということで、一応彼で想像して読みました。今の彼を大分若くすれば何とかイケます(演じたのも21歳の時だしね)。 
 で、この、新吉のかあいらしいことよ(笑)
 祇園の小さな電器屋のぼん。京都を出たくて出たくてその余りとはいえ東大に入るのだから頭はいいのですが、もう鬱屈の塊。時代も鬱屈というかどんよりというか、1970年代、彼が向かおうとしている東大も学園紛争の真っ只中。
 彼が東大に合格してから上京の日までの、短い間のお話。
 これで京都を出て行ける、なのに、歩く端から次々と、自分がいかに餓鬼であるかを知らされる出来事が。
 そのもがく感じ、もどかしさ。背ばかり180センチと高い彼の、細くて長い腕がこう、うにうにぐにぐにする様が目に浮かぶような、いきいきとした描写。
 苦くて嫌いで、でも、自分が今まで知っているのはそこだけで、勿論他に同じ場所はない、それが「故郷」。
 どんなにとんがってみても、そこで転がされている自分に気づいた時、嫌なのに、愛おしくて、笑いが込み上げてくるようなところ。
 せんまい街、なのに物凄くいろんな人がいていろんな事情がある。
 そんな彼が愈々東京に行って、故郷と新しい生活をどう擦り合わせていくのか、どんな「大人」になっていくのか、ものすごーく気になる、ほほえましい気持ちになるお話です。*p2*[日記]たまに、TVに出ている人をナマで見ると嬉しい
 そういえば、一昨日日本橋三越に行った時、地下1階の「たいめいけん」に、三代目・茂出木浩司さんがいらしてましたよ!
 この三代目さんから、よくTVにお出になったり、「たいめいけん」がデパ地下に進出したりしたんですよね。まそのことの是非はともかく。料理番組でよく拝見しております。
 大体はTVで見るまんまでしたが、ちょっと背は高くて、…あと、…顔が長かったです(すみません)。TVで見る通りの日焼け!確かマリンスポーツをなさるんだったかな。
 「たいめいけん」と言えば、何と言っても、初代と二代目が、池波正太郎との親交で有名です。どちらのご著書も大好きで、特に初代・心護さんの本は愛蔵しております。真面目な内容、軽妙な文章。料理人や芸術家って、どーしてこうも文章が上手いんでしょうね〜。
 洋食や (中公文庫BIBLIO)
洋食や (中公文庫BIBLIO)
 二代目さんはこちら。
 池波正太郎の食卓 (新潮文庫)
池波正太郎の食卓 (新潮文庫)
 三代目さんはこちら。
 茂出木雅章・茂出木浩司シェフたいめいけんの洋食 (別冊家庭画報―デリシャスBOOKS)
茂出木雅章・茂出木浩司シェフたいめいけんの洋食 (別冊家庭画報―デリシャスBOOKS) 
 あっ。「たいめいけん」の味はどうかって?…うん、普通に美味しいです(笑)。1階のレストランでオムライス、2階の高い方のレストランで、色んなものがちょっとずつ食べられるコースを頂きました。いつかは、池波先生同様、コキーユ・サン・ジャックで白ワインをやりたいもんです!