ジョン・ダニング 宮脇孝雄訳『失われし書庫』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

失われし書庫 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
失われし書庫 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 …いや〜。
 久しぶりのジョン・ダニング、久しぶりの古本屋シリーズ。
 どれぐらい久しぶりって、前作(2作目)を読んでから、少なくとも5年は経っている(笑)。結婚する前だもの。
 今回は、偶々、いつも使っている化粧品の通販の会報で紹介されていて、「ぬお!続きが出ているのか!」と、2冊借りてみた次第。
 久しぶりだから、主人公の名前すら憶えていなかった(^^;)
 でも、あらためて今回読んでみて、毎度厚いけど、中身も濃い、この作家は職人だなと思いました。
 主人公は元刑事(更に遡れば元不良!)の古本屋。発端はいつも本。殺人、謎解き、主人公のロマンス。最後まであんこの詰まった鯛焼きを思わせる結末。キャラクター1人1人が非常に生き生きとしている。しかも場面によって同じ人間がここまで変わるかというぐらい様々な顔を見せる。リアルだ〜。
 今回は殺人事件と同時に歴史ミステリの要素もあって、中盤の劇中劇のボリュームがお腹にたまって大変だよ(笑)。
 一昨日読み始めて、昨夜続きを読んで…結局遅くまでかかって読み終えた。ついつい。
 そう。このシリーズ、本体の他にもう一つ、訳者の宮脇さんが私は大好きで。読み始めてから、ああそういえばこの人なんだと思い出してからは余計嬉しくなった。
 原文も非常に流れがいいのだろうが、訳文も全くそれを損なわない読みやすさと勢いがあるし、語呂合わせや洒落の部分も、訳者も楽しんで考えただろうなと思わせる訳になっている。この訳あっての、この分厚く濃いこのシリーズだ。
 しかも、目を疑ったのは、何とこの本、原書が2004年に出ているのに、この訳書が同年12月に出ているのである!
 普通は、ありえない。
 数年、下手すりゃ遅れに遅れて3年後のはずが6年後なんてザラだし、諸般の事情で10年後!だって珍しくはない翻訳ミステリの世界で、これは何!?逆に一体どんな事情が!?あとがきにも書いてなかったんですが宮脇さん、そのへんを是非お伺いしたいっ!
 この宮脇さん、昨今の、自分が出たがる傾向にある翻訳者業界?の中にあってはオアシスみたいな方。出会いは、エッセイ集『書斎の旅人 イギリス・ミステリ歴史散歩』。この”イギリス・ミステリ”ってジャンルはクセモノで、それこそ、誰でも書けるもんだと思われていて、ちょっと齧ったぐらいの人ばかりがひどい本沢山出しているジャンルなのだが、宮脇さんの本はいい。そして知人の紹介で、料理エッセイ『煮たり焼いたり炒めたり 真夜中のキッチンで』で完全にヤラレタ。
 とまあそんなわけで、あと1冊あるので、これも明後日までに読まなくちゃ…。
 第4作。あっ!訳者が変わってる!!!!
災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-9)
災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-9)
 第1作。
死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 第2作。
幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 宮脇さんの本。
書斎の旅人―イギリス・ミステリ歴史散歩
書斎の旅人―イギリス・ミステリ歴史散歩
煮たり焼いたり炒めたり―真夜中のキッチンで (ハヤカワ文庫JA)
煮たり焼いたり炒めたり―真夜中のキッチンで (ハヤカワ文庫JA)