矢野誠一『志ん生の右手―落語は物語を捨てられるか』(河出文庫)

志ん生の右手―落語は物語を捨てられるか (河出文庫 や 19-1)
志ん生の右手―落語は物語を捨てられるか (河出文庫 や 19-1)矢野 誠一

河出書房新社 2007-01-06
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 結構カタめの評論だったんで、あらあらという間に時間が経った。
 この矢野さんの本は、何年か前に落語の本をまとめて読んだ時にも大分読んでいる。暫く落語の本を読んでなかったのだが、最寄の図書館で芸能のコーナーの本棚に寄ったら良さそうなのが固まって並んでたのでまとめて借りた、うちの1冊。以前、どんなのを読んだか記録を見たら、こんなだった。
 『落語家の居場所 わが愛する芸人たち』
 『落語長屋の四季の味』
 『志ん生のいる風景』
 『落語手帖 梗概・成立・鑑賞・芸談・能書事典』
 『落語歳時記』
 『文人たちの寄席』
 『酒場の藝人たち 林家正蔵の告白』
 …あーう全然憶えちょらん中身。しかし今回のもそうだけど、ためになることは確か。『四季の味』はこの間読んだ『落語長屋の商売往来』の前作みたいなもんかな。
 サブタイトルにもなっている冒頭のエッセイ「落語は物語を捨てられるか」は、要は、落語は物語が主なのか演者が主なのかということ。短い文章なので、この1本だけでなく、続く何本かを読むとなかなか色々考えさせられて勉強になる。詳しくは現物を読んで下さい。私はどっちかというと演者派かな。って言い切れるほど物語自体にも詳しくないけど。(原書は『落語は物語を捨てられるか』だったものを、文庫化に際し「志ん生」のタイトルがついたのは、やっぱりこうつけときゃ売れるからだろうけどね)
 「芸(本文では旧字)一筋に生きる姿」は、文楽についてのエッセイで、同じような内容のものを他の本でも読んだことがあるような気がする…まあ似たような内容のものを複数書くことはあるからね。しかしこのエッセイの初出が『児童心理』だってのが凄い。何で?と思った。
 「Ⅰ」(前半)は落語についての話、「Ⅱ」(後半)は他の芸能(現代演劇や映画など)についての話。ⅠはⅠでじっくりで、ⅡはⅡで雑多な話でこれも面白かった。昔の劇場の話や、今普通に行ったことがあったりすっかり名前も馴染んだ劇場が出来たばかりの頃の話は面白い。
 しっかし、文庫本1冊読むのに1週間もかかるとは、俺もバーニングがアラウンド*1してきたぜ。
 ↓同じ所にあったのでこれも借りた。
 志ん生讃江
志ん生讃江

*1:焼きが回った、の意