北森鴻『虚栄の肖像』(文藝春秋)
虚栄の肖像 | |
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絵画修復師佐月恭壱シリーズ。前作は『深淵のガランス』。
そうだこういう人だった…とか、思い出しながら読みました。
それにしてもこの北森先生、何でもよく知ってますよねー。初めて読んだのは多くのファン同様『メイン・ディッシュ』。料理と謎が溶け合った、つまり美味しい美味しすぎて幸せな謎の物語集。調理師免許を持っているらしい、と言われて久しいのですが、短編&エッセイ集『パンドラ’S ボックス』を読む限りではそうではないような…まあいいや。とにかく、料理に骨董に絵画修復と、広範な知識をこれほどもっともらしく(というのは、作家に向けては最高の褒め言葉です!)書ける人はいない。
例の冬の狐な人が常に重要な役割を果たすシリーズでもあります。『香菜里屋』同様、この作家の世界は全部共通であることを示しているわけですが…それにしても、目立ちすぎでない!?那智先生の民俗学よりは、同じ芸術の世界ですから共通点が多いにしても(笑)。あと、自分自身のシリーズでのこの人とは、何か違うような気がする…。
短編3作品ですが、2作目と3作目は繋がっています。でも3作目は書き下ろし…こんな話の結末が、単行本でないと読めないなんていけず!(笑)
3作目…いやーん。えろーい。これはこれで美しい話ではあるのですが、私がもし男なら、自分がかつて愛した女性の、例え結婚という果実を経た後とは言っても(不幸な結婚ではあってもそれなりに花開いていたことは推察される)、こういう変貌は認めがたいなあー。佐月は器が大きい…ってわけでもなさそうだし。まあやや無理に環を閉じた感もなくはないラストですが、うーん。
つまりは、大人の世界ねえ。北森作品のこの、「大人」な雰囲気は大好きです。しかし、頭のいい連中ばっかり寄り集まって、毎度毎度よくもまあこんなにかっこよく話が展開するよね!この、シリーズキャラクターが同一の世界にいて、彼ら同士が凄くわかりあっててトントンと謎が展開し解決されるのは好きだけど、ホントに、何と言うか、頭の悪い人間には羨ましいばかりの世界だなあ。
深淵のガランス | |
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