マイクル・コナリー 古沢嘉通訳『終決者たち』上・下(講談社文庫)

 

終決者たち(上) (講談社文庫)
終決者たち(上) (講談社文庫)古沢 嘉通

おすすめ平均
stars無駄な描写がない洗練された上品な警察小説
stars大変に気になる
stars外れなし
starsまっとうな警察小説でした
starsボッシュ・シリーズの新たなバイブル

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 
終決者たち(下) (講談社文庫)
終決者たち(下) (講談社文庫)古沢 嘉通

おすすめ平均
stars復職し仲間を得たボッシュ刑事の新たな味わい
starsまっとうな警察小説でした
starsボッシュ・シリーズの新たなバイブル

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 帰ってきた!
 ハリー・ボッシュが帰ってきた!
 帰ってきたよ!
 ボッシュ刑事がロス市警に帰ってきた。と同時に、私の所にハリーが帰ってきた。
 と書いちゃおこがましいのだが…
 いやー。帰ってきたねー。そして、君はどこまでも君だねえー、ハリー。
 えーと、前の2作は市警をやめて私立探偵をしている間で、その間にもプライヴェートで色々とんでもないことが判明して(笑)、今作の冒頭ではいきなり市警に戻っている。こりゃ良かったね。
 前の前の前の作品、『シティ・オブ・ボーンズ』の最後で市警を辞めてしまう場面を読んだ瞬間は、「おいどうすんだ、ハリー!(・0・);;;」と、ガクブルったのを昨日のように思い出せるよ。この本が出たのが2002年、読んだのも大体その頃で、職場の近くのクリニックの待合室だったのもはっきりと憶えている。
 …で…
 なに、この最新作が出たのも、もう2007年9月ですって(笑)奥付を見たら。
 大事な大事なハリーがどうなったのか気になって、図書館のHPで検索して「新刊出てるじゃん!!」と勇んで借りて…遅れすぎー!(笑)
 でも待ってよ。その頃って丁度、産後1ヶ月よ。丁度、最寄の図書館も工事中で、最寄じゃない図書館を使うはめになってた時期だし。見逃してよ。
 昨日からまた風邪を引いて(今年に入って3、4度目…)ヘロヘロだったのだが、貸出期限が明日なので一気読み。でも一気読みしやすいの。元の文章も訳文もいいんだろうな。
 前作を読んだのが最低でも3年は前なので、登場人物やこれまでの対立の経緯を思い出しながらだったが、それもスムーズに済んだ。市警の腐敗も些か変革され、ボッシュが「チーム」の一員として動きやすい状況になっている、という設定は、久々にこの世界に戻ってきた私自身のためでもあるようで何だか有難かった。
 で、ハリーは相変わらずハリーである。即ちカッコいい。一応私立探偵になってみて色々学んだのか、初期の頃に比べれば捜査の仕方も余り一匹狼っぽくはなくなってるし、毎度結構危険な目にも遭うけれど、それでも昔のような無鉄砲さが原因じゃない。でも、やっぱりハリーはハリー。訳者もあとがきで「(次回作以降も読んだが)この作品が一番好き」と書いているのも無理はない。ハリーが何のために市警にいるのか。何の為に殺人事件の捜査をするのか。正義感だとかは昔から持っているが、更に、深いものが加わって、かつシンプルな目的に向かって、齢相応の知恵と勇気で立ち向かう決意を新たにする、という今作は、本当に素晴らしい。これまでのどの作品も素晴らしいし大好きだけど、今作をイチオシにするのもいいことだと思う。
 コナリーのこのシリーズは、「当代最高のハードボイルド」と評されているそうだ。確かに。単にハードボイルドと言われた時にはただ荒っぽいものしか想像されないような気がするので、ハードボイルドという表現は余り好きではないが、刑事が主人公の推理小説として当代最高、と言うのなら正しい。マイクル・コナリー、今あらゆる意味で一番「凄い」男である。