NOW HERE NOWHERE

 一応今日ですから去年の今頃の思い出を。
 去年の今頃、図書館のしかも子供コーナーで、とんでもなく怖ろしい本を読んでしまった。
 思わず読み耽り、しかし途中で何回か顔を上げて、「今」を確かめた。
 自分が今、平和な日本の、東京の、クーラーの効いた図書館で、子供を膝に乗せている、ということを、信じられなくて、何度もこれは現実だと言い聞かせなくてはならなかった。
 それほどに、本の中身は怖ろしく、そういう怖ろしいことが現実にあったということもまた事実で、つまりは、今とのギャップが余りにも激しすぎて、脳みそがしぱしぱしてしまったわけだ。
 ということはつまり、今この瞬間もまた、途轍もなく脆いのだなあと。間違えることは簡単で、間違えた先はこの幸せのすぐ背中にいるのだと。
 今目に見えていることが本当なのだと、何度瞬きしても目の前の世界が消えないことで何とか信じて、意識してぱちくりぱちくりしながら本を片付けて帰ってきた。
 しかしこんな本、読んでわかるのは早くても小学校高学年だろうなあ。このノンフィクションの主人公は10代の少年だから子供向けの本として作られたのだろうが、大人にだってキツいよ。子供がしっかり理解できちゃったら大変なことになりそうだ。しかし子供コーナーにあるから読むんだろうな。
 いやもう…死ぬかと思った(比喩として)、ってのはこのことだ。