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 内田康夫『ぼくが探偵だった夏』(講談社
 

ぼくが探偵だった夏 (ミステリーランド)
ぼくが探偵だった夏 (ミステリーランド)松尾 たいこ

講談社 2009-07-31
売り上げランキング : 2665

おすすめ平均 star
star浅見光彦ファン必読

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 「Mystery Land」と銘打った、現役一流推理作家による「子供向けミステリ」のシリーズ。主人公が子供であるか、余りシリアスすぎず読みやすいストーリーです。
 このシリーズは既にいくつか好きな作家のものを読んではいます。子供自身が「子供向け」と決められたものを喜ぶのかどうか、私個人としては非常に懐疑的なんですが。
 むしろ、あのぐらいの齢でミステリなんぞ読む子供は、大人の世界を覗き見るということ自体が楽しい、酔っているというか粋がっているかというやつで、むしろ子供の方に寄って来てくれるものなんて迷惑に思うような気がするんですがね。そんな子供は私だけで、世の中にはもっと素直なお子様が多いってことでしょうか(笑)。
 まあ、私だってミステリらしきもののとっつきは、ポプラ社の『怪人二十面相』や、同社の南洋一郎のリライト版ルパンシリーズでしたけどね。
 ともあれ、この作品は我らが浅見光彦の少年時代、夏休みの軽井沢。浅見家は所謂別荘族というやつですから。
 あとがきで内田先生は「浅見光彦の子供時代のことを是非書いてみたかった」と書いていらっしゃいますが、正確には既にないわけではない。『記憶の中の殺人』がそれで、しかしこの『記憶〜』は、浅見ものの中では確かにちょっと毛色が違うというか、ハード度が高く、しかもお子様には向かないネタ(笑)。いや珍しく本当に暗い話で、浅見家ダークサイドっていうか。
 (そもそも浅見のデビュー作『後鳥羽伝説殺人事件』が、いきなり家族のダークサイドでしたがね…。そうして考えてみると、内田センセも、星新一の実像と一般的イメージのギャップ同様、一見「読みやすい作品の量産作家」と思われがちですが、実は結構ダークよっていうかハードな話もありますよね。特に『江田島殺人事件』とか、近年の『はちまん』とか、『靖国への帰還』とか…個人的には、ちょっと社会派寄りの重い話も嫌いじゃないです。)
 …ということで、別の出版社の話でもあるし(笑)、それはそれ、これはこれとして。坊ちゃまのひと夏の冒険です。
 …でも、こういうネタにはお約束と言っていいような、探偵団の女性メンバーって…やっぱり邪魔だよなあ(笑)。気の強い少女と決まっていて…大人の女が読むと、ウザいことこの上ないんだよねー。まあしょうがないか。子供はそういうメンバーも好むものだということになっているんでしょうか。私は子供の頃から好まなかったですが(笑)。