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 浅見光彦倶楽部(ファンクラブですね)のミステリツアー記録2冊。
 内田康夫浅見光彦新たな事件 天河・琵琶湖・善光寺紀行』(集英社文庫
 同『浅見光彦を追え ミステリアス信州』(同)
 特に言うことはないが、1つだけ。『ミステリアス信州』の方。浅見光彦倶楽部の会員数について、
「五千人という数はただごとではない。あのシャーロック・ホームズのファンクラブでも千人台である。」
 …当たり前だよ。
 ホームズの公式ファンクラブ「ベーカー・ストリート・イレギュラーズ」(Baker Street Irregulars、略してBSI。勿論、ウィギンズ少年以下の「ベイカー街遊撃隊」に因んでいる)は、入会条件が厳しいのだ。
 入会したい人は研究テーマを持って、研究をしていなくてはいけない。そういう、アマチュアだけどセミプロみたいな権威ある会なのだ。
 だから当然、日本人の会員も、研究者として本も書いている方数名だけである。入会を認められると、ホームズ物語に因んだコード・ネームのようなものをもらう。日本におけるホームズ研究の元祖・長沼弘毅さんが日本人初の会員、2番目の会員は田中喜芳さん。これだけ、世界でも有数のホームズ・ファンの国日本でも会員が少ないのだから、いかに入会の難しい団体かわかるだろう。
 他には、日本のホームズ研究界を夫婦で仕切っている(日本シャーロック・ホームズクラブ(JSHC)主宰)、ホームズで生きているご夫婦の旦那さんの方、小林司さん。彼のコード・ネームは「バリツ」である。言うまでもなく、ホームズが用いた「日本の武術」がこう呼ばれているからである。
 これだけ、世界でも有数のホームズ・ファンの国日本でも会員が少ないのだから、いかに入会の難しい団体かわかるだろう。
 っていうかそもそも、会費払うだけで入れるファンクラブなら、あのホームズのファンクラブなのに、世界で千人台なわけないでしょ…。
 とまあ、常識で考えればわかりそうな話ですが、わからない人は普通に誤解するだろうから、妙な書き方はやめてほしい。(著者は内田先生になっているが、内田先生のエッセイ部分以外はライターが書いているので、ライターのミス)
 ちなみに、モーツァルトの公認団体(名前失念)のメンバーに至っては、モーツァルトの作曲数に合わせて確か626名と決まっており、退会者もしくは会員の死去がない限り新しく入ることはできない。でなきゃ、それこそモーツァルトのファンなんつったら全世界で何千万人になるかわかりゃしない…
 …とまあつまり、自分とこがいかに凄いかを強調しようとする余り、不用意に比較対象を持ってくるとこういうミスをやらかす、ということである。勿論、「〜クラブ」が常時会員1万人台ということはそれ自体凄いことなのだから、勿体無いミスというか、勇み足ですな。