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紫雲の怪 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1809)
紫雲の怪 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1809)和爾桃子

早川書房 2008-02-15
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 初訳はこれで最後だそうです。後は、これまでにもあったような、旧訳のあるものの再訳。
 最初の任地に戻ってきたディー判事。空っ風の吹く西域の入り口の町で、国際色豊かな面もある謎の事件が続く。今回もなかなか人物関係入り組み系、そして、穏やかな語り口で誤魔化されてしまいますが、やっぱり被害者の死に方は陰惨なもの。『中国鉄釘』といい、殺害の手口や死体は結構残酷なことが多いんですよね…。偽らざる中国を知っている学者故、と言ってはかの国の人々に失礼か。
 ディー判事―狄仁傑(ディー・レンチェ)、実にいい名前です。唐代に実在した実在の名官僚ですが、勿論事件は架空のもの。淡々とした作風ではありますが、判事は謹厳実直、時に厳しく時に優しく、家庭円満、そして部下にも恵まれている。シリーズの魅力は、プロットが優れているのは勿論ですが、やはり、実在の人物の才知を上手く魅力的な名探偵に仕立てた、この隠れた名キャラクターにあるのでしょう。
 沢山あると思っていたこのシリーズも、これが最後とは…あとは中短編集1冊を残すのみだそうです。そう言われてみると淋しいなあ。