ヒストリー・オブ・バイオレンス

 

ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD]
ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD]ジョシュ・オルソン

日活 2006-09-08
売り上げランキング : 30143

おすすめ平均 star
star粗いけれど、魅力的。
starラストが心に残る
starはてはて!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 DVDでやっと観ました。
 ヴィゴ主演の作品は、観るには結構心の準備が要る(笑)。オッサンはオッサンなんだけど、脱いだらというかシーツの下に入ったらというか(どうして外人さんのベッドって、上も下もシーツなんでしょうか)、あら不思議、という人なので。
 私は映画に詳しくはないし、クローネンバーグ作品を他に観た事があるわけでもないし、しかも評価の高い作品に今更私が何を言う必要もないが…。
 うーん、やっぱヴィゴはいいわ。
 「二面性」をやらせたら天下一品ですね。
 LotRでも、いざという時やたらめったら強い、というか、王様とは思えない凶暴な血まみれ面をして下さる王様と、2000歳!年上の恋人の前では余りにも可愛らしい青年の両方を見事に出した(87歳とはいえ、人間の3倍寿命のある種族なので、単純に3で割ると30前ってことにはなるし、監督も「まだ青年なんだ」と言っている通りの演技でした)。
 今回も、基本的にはそういう演技なんだけど(ついでに言うと、ヴィゴといえばの頭突きも健在だった(笑))、舞台が現代で、暗い過去を持つ男が現在をどう守るかという話。繰り返すけれど、「弱さ」の見せ方が上手いんですよね、ヴィゴは。LotRでも、いい歳のくせにあれだけ弱さ見せまくってうざくないキャラも珍しいですからね(笑)。
 好きな俳優さんなのに、ラヴシーンを演じている時ですら好きっていう、もう正に病がコーヤコーヤ星、じゃなかった、病膏肓に入るってやつでしょうかね。だってねえ、どうしていい歳のオッサンなのにこんなに可愛くなるんですか。
 話を戻して。
 暴力シーンだのあらーんなシーンだのを今のキャリアでやる必要はないという意見もレビューには見受けられますが、役者である以上別にいつどんな役をやったっていいでしょう。逆に今彼の「インディアン・ランナー」を観たって面白いかもしれないし。(勿論、他の恋愛物でも色々と可愛いし。)
 暴力的な過去を封印したはずの男が、過去を知る者たちに追われて、また暴力で現在を守る。
 バイオレンスシーンとえっちシーンはまあ苦手な人は飛ばしてもいいけれど(私も、つい視線がテレビの斜め上に行っちゃいましたが…)、作品自体が短いのでうっかり飛ばすと話がわかんなくなります(笑)。
 それに、どっちのシーンもいい具合でリアルで、見せているようで見せすぎてない、不思議な監督ですね、クローネンバーグって。赤裸々なシーンであっても、ちゃんとその必要性が伝わってくるもの。だから、見せられてる、っていう気はしない。
 それに、もしああなったら、私も奥さんと同じ行動を取るだろうな〜と思ったし。
 …夫婦なんてあんなもんよ〜(笑)。
 今更、知らなかったことを知ったからって、現在を変えるのもめんどくさいし。何より、もう家族なんだし。ある意味惰性だし、保身だし、絶対なの。
 家族っていうのはもう作って、持っているだけで完璧なの。
 それを失わないためにまた暴力に訴えるとしても(但し、勿論これは暴力推奨映画ではありません)、力で勝つ能力があるのならそれを使うとしても間違いではない。いかに避けられないことか(いかに相手がとんでもないヤツか)、いかに家族が唯一の存在かを、時間をかけずに見せ、主人公の戦いを淡々と描く。何を声高に訴えるわけでもないですが、やっぱり暴力(人殺し)のやるせなさも見せているし、未来の明るさも、ラストシーンの家族それぞれの行動が暗示しています。
 結局の所、暴力も、愛も、「理屈じゃない」ってことなんですよ。
 結婚したり、子供を持ったことで一番知ったのは、理屈ってもんがいかに現実の前ではどうでもいいものかということと、「現実をそのまま受け入れるのが最初」ってことでしょうかね。あんまり、「あるべき姿」みたいなものに拘らなくなった。私はそれを知るのが遅かった気はするけど、世の中には自分の思い通りになることばっかりじゃないとか、なるようになるとか、そういうことは、結婚して自分が親の世代になったことと、更には実際に親になったことでわかったかなあ。どぉーしようもないものは、もう、どぉーしようもないんです(笑)。
 主人公も、過去に負けて再び銃を取ったわけではないと思います。過去からは逃れられないという現実を受け入れたからこそだと。過去を振り払おう、消そうとするのではなく、恥ずべき過去であろうと、その過去を再び持つ人間として生きるために、執拗な敵に銃を向ける。それは形の上では敵を消すことになるだろうけど、もう彼は家族に自分の過去を隠そうとはしない。それが彼が正しいと思い、選択した人生。
 家族もまた、彼が何をして帰ってきたのかは、わかっているはず。
 あと、私は、いい映画には長い時間を必要としないと思うので、本当に本筋だけどばばーんと行って1時間半弱のこの作品、描かれていない部分は「省略した」ってことで全然問題ないし。
 え?LotRですか?いやあれは、原作のあるもので、その原作が長いからしょうがないんだよ。原作通りにやったら大河ドラマでも足りないし(笑)。

 ああ、あと、エド・ハリスウィリアム・ハートを敵役に配しておきながら、登場時間短すぎでした(笑)。