イースタン・プロミス

イースタン・プロミス [DVD]イースタン・プロミス [DVD]

Happinet(SB)(D) 2008-11-14
売り上げランキング : 3671
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 えー、この記事を書いているのは11月も半ばです。なかなかまとまったものを書く時間が取れなくて。でも時間ができたからにはうだうだ言わずに書いてしまいましょう。
 そういやあ大昔にSGA様の所の記事で読んだよな…なんて思いだして、今回あらためて見直してみました所…ははは、ネタバレ思いっきりしてるんですね(笑)。記事の内容をすっぱり忘れててよかったです(^^;)←読む端から忘れるってのも便利な性分です。
 こちらはネタバレバリバリですのでご注意下さい↓
 http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2008/11/post-4145.html

 で、それとは別口でも、「ヴィゴが『インディアン・ランナー』に続いて全〇になってる」ってのはAmazonのカスタマーレビューや、もっと前にネットのニュースで、「忘れられない映画のヌードベスト30」に入ったというのを読んでたので知ってました。
 え?何?「王の帰還」ならぬ「王の〇間」?イヤン、アタクシそんなのが目的ではなくってよ!…いや本当に。あのシーンだってあくまで必要だからです(いや少なくともクローネンバーグ監督に言わせれば不可欠なんでしょう!)。「無駄はやらない」「必要と認める部分は思い切ってやるけど、決して描き込みすぎない」という芸風(?)の監督かなあとは、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でも思ったので、ああ今回もだなと。
 最初に言いますと、個人的な思い入れは…まあ先に観たというのもあるかもしれませんが、「ヒストリー…」の方かな。家族の中でも「夫婦の物語」ってのは、やっぱり自分と比較して、クローネンバーグ監督の恐らく言わんとしていることには、概ね賛成だったので。
 そして今回もまた、大したことは書けやしません。いやー、ヴィゴの映画だったなと。それだけです(笑)。「キャリア最高の役と演技」という呼び声にも賛成。アカデミー賞がどれほどの権威かは知りませんが、ノミネートされることが名誉だというならヴィゴの主演男優賞ノミネートはそれに値しますし、獲れなかったのもまあこの人らしいっていうか…その年のこともよく知らないし、私には何とも申せません。もうとにかく、ようやった、かっちょいい、ヴィゴ、であります。
 で、ストーリーですが。
 単純です。
 熱意の余り、危険に巻き込まれていくヒロイン。謎のヒーロー。仄かな恋物語
 この作品についての批判的なレビューの多くは、「道具立ても役者もカッコイイのにストーリーが単純すぎる」というもののように思われますが、道具立てがいいのはそもそも監督と脚本の腕だし、私は、これぐらい筋がハッキリしている方がいいと思います。いい役者に集中して見られるし、キャラも立つし、観終わってから色々考える楽しみもあるし。まあこれも結果論かもしれませんが。何より、前作同様、2時間ない。余計なことは描かなくていい…私は、短め映画推奨派ですので。(だから、じゃあLotRは何なんだ!と突っ込まないで) 
 病院に担ぎ込まれてきた少女の妊婦。子供は何とか取り出せたものの、少女は死んでしまう。立ち会った、ごく普通の助産師が、子供の家族を探そうとするうちに、怖ろしいロシアンマフィアと関わることに…
 彼女が出会い、そして何故か彼女を助ける、組織の運転手・ニコライがヴィゴ。
 いやー。
 渋い。スマート。ヴィゴって着痩せするタイプなんですかね。スーツが細身で、でも全く無理がない。どーしてあのお肉(脱ぐと結構たっぷんたっぷんしてるんですが)が、あの服の肩幅に収まるの!?とそればっか気になってしまいました。
 あと、ヴィゴの雰囲気が元々余りにも北欧系または東欧系(実際見た目通り北欧系ですし)なもんで、彼が立っているだけで、その街がロンドンとは絶対に思えない(笑)。どっちかというとニューヨーク(笑)。お金の単位が「ポンド」なのが出てくるまで(最初の方の、散髪料を払おうか?のくだり)、舞台がロンドンということすら忘れてましたよ!(笑)。それに勿論ワタクシ、裏社会の事情には疎いので、「へ〜ロンドンにもロシアンマフィアっているんだな〜」とか普通に思いました。(まあちょっと、ロンドンにロシア料理って、ちょっと違和感ありましたが←インド料理店は多いんだけどあんまし違和感ないのは何でだろ。)
 まあ確かに、あの容姿が、逆に、ロンドンには余りにも似合わない「別世界」としてのロシアンマフィアファミリーというものの存在を際立たせているのであって、そこらへんは監督の目のつけどころがいいなと思います。
 しかし、私には、ヒロインがニコライに惹かれるのは当然として(だって、映画のストーリーを抜きにしたって、あんなカッコイイ人が度々自分の前に現れて、あんな風にさりげなく優しくしてくれたら絶対惚れるでしょ!ニコライ、あんな女じゃなくてアタシにして!と観客は思うはずです!)、ニコライがヒロインに惹かれる理由がまーったくわからなかったーとです。
 まあ、若く美しい女性が、しかもあれほどひたむきであったら、ドラマ的には「何か」起こらないといけないってのはわかりますが。
 あとは、人の命を軽々しく、そして死体をゴミのように扱う稼業と、それとはまるっきり逆も逆、生命の誕生という瞬間を扱う仕事という2人の出会いの妙、というのはあるかもしれませんが、ちょっと理屈っぽいかしら。監督はそんなことは考えてなくて、単に被害者が、母子共に非常に危険な状態(臨月近くもしくは臨月での早期胎盤剥離)で担ぎ込まれるというシチュエーションが必要だっただけだとも思われます。
 「ヒストリー」同様、この作品も「家族の物語」と言えるかもしれません。悪の組織の家族(文字通り「ファミリー」(笑))、ヒロインの家族(伯父夫婦との擬似親子)、そして、強制的に作られ、完成する前に消えてしまった被害者の少女とその娘という家族。そしてどこかにいる、少女の家族。もっと思いを馳せれば、人身売買された女性たちそれぞれの、故国にいる家族。そしてニコライの…。
 背後にとても大きなものを(組織的犯罪、家族の愛、別れ、悲しみ…)持っていようと、主眼はあくまでもひと時のドラマ。それでいいと思います。そのドラマが、後日談を想像してみたり、色々考えたくなるぐらい、ちゃんと描かれていれば。
 そして幕切れ…今回も多くを語りません。同じ語らないにしても、まだ「ヒストリー」の方が、一応は普通にハッピーエンドと考えられますが、今回はもう、色々ですね。ニコライが本来あるべき道を採ったとしても、「一番マシ」というだけ。バッドエンドだったら…それこそ目も当てられない。しかし映画は、そこまでは語りません。あくまでも、描かれたのはヒロインとニコライの出会いにまつわる、クリスマスシーズンの数日間の物語だけ。ヒロインの成長や救済はわかりやすいとしても、ニコライの心の動きは、観客がそれぞれ想像してみるものなのでしょう。
 
 一応、悪のファミリーの方にも触れておくと、悪の帝王である「パパ」のコンプレックスの塊みたいな息子にヴァンサン・カッセル。久しぶりでした。彼が色々と感情の起伏の激しい人で、ニコライのお仕事は、運転・汚れ仕事・王子のお守りの三点セット。しかしこの坊やは重要な役割を果たします。ニコライと彼の関係が、映画が終わった後のお話の鍵を握っていると言えます。
 同じヴァンサンさんといえば、私が好きなのはヴァンサン・ペレーズさんの方でした。フランス系は紛らわしいわね!(「愛する者よ、列車に乗れ」よろしく!)
 あと、直接描かれていないのが狙ったのか単にあぶれちゃったのかわかりませんが、「孫の前では普通のおじいちゃんだがやっぱり悪の帝王バリバリのパパ」と、そもそも物語の発端となった「未成年淫〇」という、普通の悪事とは質の違う犯罪が、大事な点なのに、イマイチ繋がらなかったですね。台詞で十分説明されているし、ストーリーとして理解はできるのですが…。このパパの怖さは非常に短いシーン、短い台詞だけで表現されているので、最後まで生々しさが伴わなかった。それがいいことなのか悪いことなのかはわかりませんが。
 
 あとは細かい話。
 ヒロインの勤める病院で、ヒロインが出てくる出口にでっかく「LABOR WARD」だったか、「DELIVER WARD」だったか(レイバーのスペルは2通りあって、LABOURかも。普段は「労働」という意味ですが、陣痛という意味もあります。DELIVERは出産)。つまりあれは産科専門の出入り口ってことですかね。病院の一角に産科のみの出入り口がある!のか、それともあれは産科専門の緊急窓口なのか。まどっちでもいいですが、余りの目立ちっぷりにびっくり。
 英国では、出産の多くは無料の助産院で、日本と比べて、よっぽど医学的必要な処置が必要とわかっていない限り、病院で出産すること自体少ないと聞いていたのですが。勿論この作品のように、危険な状態になった妊婦さんは病院に運ばれてきます。保育器が当然何度か出てきましたが、英国の病院だと、ここにいる子たちはみんな凄い危険な出産だったんだろうか・・・と思いました。推測ですけど。
 ヒロインの伯父さん。元KGBって絶対ウソだろ!って思いませんでしたか?何かただの大口叩きの人っぽい。彼のことを口にするヴィゴの、ちょっと憐れむような表情。その謎もある程度終盤で解けるのですが。
 それと、ヒロイン、いい歳していつも伯母さん(伯父さんの奥さんですよね?)に起こされてますけど、私は女性なので、ヒロインの「お目覚め」のシーンなんか、全く同じ撮り方で2回もやってくれないでいいです(笑)。あれってファンサービスなんでしょうか??

 さて、話を戻して?「その点」ですが…
 皆さんも、「王の〇間」が「見たい」のではなくて、「ホントに見えちゃうの?」という方向の興味だと思うのですが、私もそうで、実際見てみると、
「何だ見えないじゃん。」
と(決して残念なのではなく(笑))。
 説明しますと、交渉ごとのために、お互い隠し事のないようにと、サウナに誘い出されたニコライを、屈強な2人の刺客が襲います。徒手空拳のみならず全〇!のニコライは、2人のナイフをものともせず、そして全〇であることなどまるでおかまいなしの(笑)、ガチバトルを展開。
 とにかく、ヴィゴの格闘能力の高さにただただ圧倒されてました(笑)。殺陣のプロが振り付けしていることとはいえ、やっぱりあの方は…強すぎですよ!(笑)
 滑りそうだしな〜。血でぬるぬるするしな〜。「何で大の男2人+ナイフ2本で勝てないのかな〜」とか突っ込み入れつつ観てました。
 あと、「巻き込まれた他の客が可哀相」とも思いましたし(笑)。誰か怪我してなかった?運の悪い…
 「ベスト30」入りは、もう…裸であの強さだからですよね〜。特に他には何も…
 全身タトゥ!が、濡れた全〇の肌に…なんですが、そのへんは、そのまんまペンのブルーブラックインクの色みたいだな〜と、余り生々しい感じはしませんでした。(外国では紺色のタトゥーは元々紺色のインクで入れるんですね。日本では文字通り「墨」を入れても皮膚の下では青っぽくなるので「刺青」と書くのですが。これを「いれずみ」と読むと芸術として入れている方々が怒りますので、「ほりもの」と読みましょう。)
 それに、結構、お肉、たっぷんしてますよね?
 あれ凄い微妙な量ですよね〜。「デブ」でもないけど引き締まってもいない。結構「膨らんでる」というか「やわらかそう」。ホントにあれが何であんなにスーツにスッキリ収まるんだ!?ガイジンの身体ってマジック!?
 あと、私には、「全〇シーンでぼかしが入ると結構冷める」という困った性向がありまして…
 うーん、ほら、「見えちゃったら隠せばいいや」なんて甘い気持ちでやるな!という、意味不明な批判をしてしまう(笑)。
 …気にしてない割にはこのシーンの感想が多いような気がしますが(笑)。私が言いたいのは、「やるならやれ!」ということですね。(ちなみに、「インディアン・ランナー」はモロばっちり見えだったので、ボカシでした。)
 そこへいくと、この作品では、あれは…技術ですね〜(笑)
 映画の撮影ってのはカメラが何台も回ってると思うんですが、その全てのバージョンをチェックして、
「あっここはバッチリ映っちゃってるな〜」
「じゃここ、別のアングル探そう」
なーんて、各バージョンを繋いで、ああいう、「見えそうで見えない一連の格闘シーン」にしているわけで…
 野郎のハダカを(笑)、おっつぁん野郎たちが熱心に「見えちゃってる・ちゃってない」判定と編集をしている姿ってのは…異様というか滑稽というか(笑)。真面目に想像しちゃいけません。
 ちなみに、ヴィゴは刺青をしてもらうのに機械彫りでしたが、あれは針の束が猛スピードでダダダダダッとピストン運動をする機械です(針の太さや本数の違うアタッチメントを交換できるようになっている)。インクをつけた針の先を肌に繰り返し打ち込むわけですね。手彫りでも仕組みは同じで、筆のような軸の先に針の束がついていて、手作業で何度も刺していく。妹尾河童『河童が覗いたニッポン』によると、機械彫りと手彫りの違いは、手彫りの方が「遠目の迫力がある」んだそうです。劇中でのヴィゴの刺青が「描いた」ように見えるのは、勿論本当に描いたものなのでしょうが、「ああ、あれは機械彫りだからなのね」なんて、勝手に知ったかぶりをしてみるのも一興。
 お付き合い有難うございました。