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「恐怖の報酬」日記―酩酊混乱紀行 (講談社文庫 お 83-6)
「恐怖の報酬」日記―酩酊混乱紀行 (講談社文庫 お 83-6)
講談社 2008-05-15
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おすすめ平均 star
star羨ましい
star人間恩田陸と作家恩田陸
star旅好き(only on surface!) beer 好き映画好き

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 と、今は文庫が出ているのだが、個人的には、某旅行ガイドブックシリーズくりそつな装丁の単行本がナイスだと思う(私はこっちで読んだ)。
酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記
酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記
講談社 2005-04-23
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おすすめ平均 star
star飛行機に対する恐怖。
star紀行文ではないです
starイメージが変わりました

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 最初に言っておく!私はこの作家の推理小説を読んだことがない!
 ので、あくまでも、イギリスとアイルランドを扱ったエッセイ、として読んだ。
 そして結果的に、この人色々私と合うなあ〜、と、楽しく読んだ。
 だからどっちだっていいのだ(何が)。
 しかも!
 何と!
 著者がロンドンに旅立ったのは、何と!(2度目や)私が新婚旅行でロンドンに出発した、正にその1週間後だったのである!(2003年9月19日金曜日)
 確かロンドンフリープラン4泊ぐらいのコースで、12日金曜日午前11:40のANAで成田を出発。そして、時差の関係で同じく12日金曜日16:30には、ヒースローからロンドンに向かうバンの中にいて、21:00には「パブ・シャーロック・ホームズ」でビールを飲んでいた。「この時点で、前に起きてから24時間寝てないなあ」と思いながら(私は乗り物の中では寝られないのである…)
 何故こんなにも日付と曜日を憶えていたか。
 それは、
 土曜の夜のシティで道に迷ったからさ。
 到着翌日、13日土曜日は1日オプショナルツアーの、ストーンヘンジとバース観光(この2ヶ所は近いの大抵セットになっている)。で、その後ロンドン中心部の何かを観光していて、さてホテルへ帰ろうという時に道に迷ったのである。
 何がまずいって、シティというのはロンドン経済の中心部で、非常に狭いエリアではあるが観光地というよりは金融機関だとか企業が多く、ということはつまり週末はゴーストタウンになってしまう。本当に、暗くなったら人がいないことが身にしみた。そしてそういう場所だから、何と、「土曜日は降りられても入れません」とかいう地下鉄の駅や、「使えません」というバス停が存在するのだ。だから、道に迷った恐怖を倍増したのは、漸くたどり着いたのに入れない駅や、使えないバス停だった。…でも、異国の夜に道に迷っても、死ぬほどじゃあなかったのはやっぱり、高揚感かなぁ。若気の至りです。結局その時は何とかヴィクトリア駅に辿り着き(昼間のツアーでお世話になった現地日本人ガイドさんが会社帰りなのか、同僚と談笑しているところにまた出会った(笑))、無事地下鉄でホテルに帰ったのだった。
 そして、著者の恩田氏も(男性だと思っていましたが最初の方で女性とわかりました…)、到着翌日にストーンヘンジに行っているので、これまたぴったり1週間のニアミス。
 そうそう!ストーンヘンジは、イヤホンガイド(形は電話のでっかい子機)が長い。私たちはツアーだったので結局途中で聴くのをやめました。いやーあれは今思い出しても謎ですわ。
 話を出発前に戻すと、著者は元々マザー・グーズなどでイギリス文学に親しんでいらしたというのだが、イギリスではないが同じ児童文学として『若草物語』と『赤〇の〇ン』の話が出てきて、これにはえっらい共感。だってこれまで私、『赤〇』について触れた文章で、ヒロインをうざいと思っているものに出会ったことがないんですもの!
 女子は『若草』(ジョー)派か『赤〇』(ア〇)派かに分かれる、と著者は言い、著者は『若草』派。私もじゃ!
 『若草』は普通に読めたのだが、こう言っちゃ批判の根拠も薄くなるが、『赤〇』の方は、あのアニメ観ただけで嫌になった(笑)。
 アレ、ただ単なる自意識過剰のウザ女にしか思えないんですが、どうなんでしょうか。
 何かあるとすぐ「私は世界一不幸」「こんなに不幸な子は私しかいないわ」。ボケー氏ねー。
 あのー、一言で言えばああいう子って、所謂「イタい」子ですよね?
 実際いたらいぢめますよね?いじめられっ子だった私だっていぢめますよきっと。
 でも問題はきっと、いぢめられても気づかないってことだな。そこに更に腹が立って、彼女のことは永遠に嫌な思い出になるんだろうな。実際いたら。
 …いやー。初めて同志に出会って、嬉しいっすよ。
 いや、個人的意見ですので、『赤〇』ファンの方、包丁持ってこないで下さい。
 ちなみに『若草』の方は、まあ彼女たちの家庭環境とかはイマイチリアルに理解できないけど、齢を取ると4人それぞれの気持ちがわかるようになりましたね。初めはジョーなんだけど、そしてメグは今でもちとウザいが、べスの見栄もエミリーの気持ちも、わからんでもない。
 …あー、エッセイと感想がどんどんかけ離れる。
 同志、という点で(勝手に)最後に1つ。
 これは、私の司馬遼太郎嫌いの理由を、見事に言い表してくれた部分。
 著者は彼の『街道を行く』シリーズの『愛蘭土紀行』について、アイルランドを実際に見た上で書いている(私も偶々家にあったので大昔にこの本は読んだが、当時はアイルランドという国自体について余りにも何も知らなかったので無批判に読んだ)。
 著者も私も、彼の「小説」を、言いかえれば「小説家」としてのテクニックは評価する。
 でも、もうこの一言に尽きる。
「シナリオを書いて撮った映画を、あわよくばドキュメンタりーだと思ってくれればいいな、という仄かな期待みたいなものが匂うのである。」
 いやー。うまいな。うまい言い方だな。微妙にオブラートで。
 (同時に、「歴史家ぶった作家」が嫌いな理由ー!)
 いや、もっと嫌いで、私ははっきり、嫌いで、批判したいけど。「表現」するとなると、この一文がかなり的確だ。
 「虚構というものの力を信じない作り手が、私はあまり好きではない」
そう!そう!その通り!
 要は、彼は、作家の癖に潔くないのだ。
 自分が「創作した」ものに、もっと自信持てば?と思う。
 「創作です」と、胸を張って主張してみたら?
 なに?創作したものに自信ないの?「ホントかもよ」ってごまかしときたいの?
 そこが、私が彼を大嫌いで、山田風太郎筒井康隆を最も、そして永遠に尊敬し続ける理由。
 そう、私は司馬遼太郎の、中身がとか文体とか以前に、「作家としての姿勢」が嫌いなんだよね。
 そんなに、堂々と「創作です」と世に問えないなら、小説書くのは一切やめて学者になりなさい。学者になって、100%本当のことだけ追い求めて書きなさい(逆に言えば、学者の論文だって、「私はこれが妥当だと信じる」という結論をいかに根拠を挙げて人を納得させられるかであって、決して「真実を求める」ものではないんだけどね)。
 作家なら創作しなさいよ。そして創作したもので人を驚かせ楽しませなさいよ。半端なことしてないで。
 …とまあそんなこんなで。
 本当は、「飛行嫌いの人がいかに外国へ行ったか」とか、「幼少より英国文学に親しんだ(そして自分で仰るよりかなり英語の素養はありそうな)著者が、実際に現地でどう感じたか」とかをもっと真面目に受け取り、論じるべきなんでしょうが、ただただこんな感想文になってしまいました。すいません。
 ちなみに、こうして新婚旅行のことを思い出している今日は偶然(ホントです)、結婚記念日です。