ファンのハートにも時効はないぜ!―アガサ・クリスティー展

 http://www.e-tix.jp/agatha/agatha.html
 やると知った時「おお!」と思い、前売券も買ったので行ってきました。
 東京国際フォーラムAの相田みつを美術館でやってます。
 彼女にまつわる個人的な思い出・感謝については、またいつかどこかでということで、展示についてのみ。
 …いやー。
 貴重さの度合いでは、色々な展示の中でも近年ピカイチのものだと思います。
 スペースは狭いので段差があったりしてちと苦労のあとが見えますが、量より質がホントに凄い。
 アジア初のクリスティー展だそうですが(考えてみたらこれだけアガサにお世話になって、日本で今まで何もやってなかったというのが意外…)、展示品が、余計な色々ではなく、「彼女のもの」に徹しているというのがスッキリ、サッパリ、潔い、無駄がない。(それだけに「地味」と受け取る人もいるかもしれないけど…)
 自筆メモ、タイプ原稿、プライヴェート写真、愛用のタイプライター、旅行カバン(!)、洋服。当時の新聞の切り抜きや、舞台「ねずみとり」の記念グッズ。
 アガサに浸れましたね〜。
 50年ぐらい前にタイムスリップできた感じ。
 こんだけ自筆メモを見る機会って二度とないかも。
 彼女の字は、崩した時も、力の入れ方にむらがなく、曲線が綺麗。外人にしちゃあ綺麗な筆記体が元々書ける人が崩した場合の字と思いました。
 個人的には、早川のポケミスの初版本も嬉しかった。
 考えてみれば、私とほぼ入れ違いで彼女は亡くなっていて、私には、リアルタイムで新刊を読むという経験がないので、その初版本を見ながら、リアルタイムの彼女のファンはどんな気持ちで書店でその本を手にしたのだろうと、想像してみるだけでワクワクします。今好きな、人気のある作家の本を、リアルタイムで「出た!」と言って読めることは、本当に幸せなことなんです。
 旅行カバンなんかねえ、ホントに、息遣いが伝わってくるってやつですよ。
 貴重なプライベートフィルムや、肉声も聴けます(割と聴きやすい声です)。
 P.G.ウッドハウスからアガサへのカード。
 このP.G.ウッドハウスもイギリスを代表する作家です。アガサとは親しかったそうです。たまにあることですが、こういう、私の好きなもの同士が繋がるって、やっぱり嬉しいものです。
 ちなみに、ウッドハウスの執事ジーヴスシリーズのドラマ版でジーヴスを演じたのは、「オスカー・ワイルド」でワイルドを演じた知性派俳優、スティーヴン・フライ。ワイルドはオックスフォード卒ですが、この俳優さんはケンブリッジ卒。ちなみにハリポタシリーズの朗読CDも担当してます。
 参考↓によれば、相手役(ご主人様)も大学時代からの相方だそうで…ぴったりすぎるじゃないですーかー。
 http://www.tvgroove.com/blog/usagy/tv/000266.php
 アガサ夫妻は犬が大好きで、今回の展示でも犬を交えた写真が何点もありました。
 そのうち、夫妻と犬を写した1枚は、『運命の裏木戸』の裏表紙に使われたものだそうです。
 私が最初に好きになったアガサのシリーズキャラは、トミー&タペンスでした(後に、ポワロもミス・マープルも勿論好きになりましたが、子供の頃は粋がってたんですよ〜)。この、『運命の裏木戸』は、夫妻の晩年に起きた、シリーズ最後の作品です。この中で重要な役割を果たすのも、夫妻が飼っている犬。粋な裏表紙です。『運命の裏木戸』は、勿論大好きな作品で、今でも、小学生の時に読んだあのドキドキを思い出します。
 今日やっと、買ってきたグッズの袋を覗いたら、映画の宣伝のしおりが入ってました。『ホロー荘の殺人』がフランス映画「華麗なるアリバイ」として映画化されるとのこと。この頃、クリスティー作品のフランス映画化って続いてますねえ。まあそれは兎も角、『ホロー荘』も、私が最初の頃に好きになった作品です。日本でも「危険な女たち」というタイトルで、大昔にドラマ化されてまして、旧早川ミステリ文庫の表紙がこのドラマの女優陣だったこともあります(そっちで持ってた)。確かに、女性キャラが非常に魅力的なのでドラマ化には向いていると思います。結末も、うーんと唸るようなものなのですが、ドラマでも上手くそのままやれてるといいんですが…ドラマって、この、結末が難しいんですよねえ。犯人の動機や考えの流れが、文章でしか訴えられないことって多いですよね。結末で台無し、にならないことを祈ります。特に、映画化タイトル通り、アリバイが…ああ以上は秘密!!!
 作品を好きであるのにその作者を好きである必要も、崇め奉る必要もないけれど、やっぱりアガサ・クリスティーの作品のファンなら、こうした「作家の生活」に触れるのも色々参考になると思います。
 ただ、休日なのに空いてたのは意外。熱心なファンは会期前半にとっくに来ちゃったってことかな?それともやっぱり、場所が悪いんだろうか…有楽町なら交通の便が悪いとは言わないけど、文学展って感じの場所じゃないし、国際フォーラム自体が広くて、実は「見たいけど、あそこ行くのかぁ…」と正直げんなりしてました。もうちょっと、何というか、それっぽいスペースでできなかったかなあと、思います。だってホントに、貴重品ばっかりよ!奥様!
 グッズも、種類はそんなにないけど、どれもツボだった〜!本とかグッズとか〜!沢山欲しかった〜!でも現金のみで、持ち合わせがギリギリだったので、本は会場を出てソッコー携帯からAmazonで注文しました〜(持って帰るのは重いし、丁度よかったけどね…)。初版本の表紙の絵葉書と、アールグレイ味の缶入りキャンデー(缶だけ飾っておきたくなるので!)、ブックマーカー(小さくて便利そう)、図録を買いました。
 本はこれ。これで、私の「ミステリ料理本」に新たな1冊が。(ホームズ、スペンサー、メグレ警部のはもう持ってます)レシピ本というより、写真や読み物を楽しみたい感じです。

アガサ・クリスティーの晩餐会―ミステリの女王が愛した料理
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 あと、新発見の未発表原稿を含め、自筆メモを本にしたこれまた垂涎本。これはソッコー…図書館に予約しました。先月出たばっかりです。予約混み合ってます。これもグッズショップで売ってます。早く読みたい読みたい!!
アガサ・クリスティーの秘密ノート(上)(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
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star労作です、ほんとに
starちょうど100冊読み終えたら
star“ミステリの女王”の思索の跡を訪ねる旅路に、わくわくしました。

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