アガサ・クリスティー&ジョン・カラン『アガサ・クリスティーの秘密ノート』(上・下)

 図書館でリクエストしたら下巻が先に届いて、大分前に読んだのですが、下巻から読んでも問題ありません。

アガサ・クリスティーの秘密ノート(上)(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティーの秘密ノート(上)(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティー ジョン・カラン 山本やよい

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おすすめ平均 star
star他のアガサ読本と違い、この本は、一般読者が楽しんで読めるようなものでは全くない
star労作です、ほんとに
starちょうど100冊読み終えたら

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アガサ・クリスティーの秘密ノート(下)(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
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おすすめ平均 star
starクリスティーの作品をあれこれと読み返してみたくなります。
starちょうどよいときに出ました。

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 「秘密ノート」というタイトルは決して大げさじゃありません。だって今までずっと秘密だったノートですもの(笑)
 研究者がクリスティーの住んでいた家で大量の創作メモノートを見つけ、それを整理して本にしたもの。
 …そもそも、私は、5月に「アガサ・クリスティー展」で創作ノートの現物を見るまで、アガサに創作ノートがあるということさえ、考えたこともなかったんですが(笑)。
 勝手に、そのまんまスラスラスラーと書いてたと思い込んでました!できあがった文章には、苦労の跡がないっていうか…
 (モーツァルトも、頭にある楽譜をそのまま書いたというのが通説でしたが、彼も実は下書きはしていたというのが最近の研究で言われてますし。)
 文章を書くってやっぱり大変なのねえ。(当たり前じゃ。)
 創作ノートなので、ストーリーやキャラクター、トリックのメモや草案が書いてあります。従って、まさかそんな人はいないと思いますが、クリスティー作品を全く読んだことのない人は読まないで下さい。だってネタバレがほぼ全部(笑)。各章の最初に、どの作品のネタバレをしているのか書いてあるので、読んだことのない作品のネタバレだけ避けるということも理論的には可能ですが…普通は全部読んじゃうよ(笑)。
 かといって、全作品読んだことのある人が(私もですが)これだけ読んでも、「へー」で終わっちゃう。勿論、ほとんどの作品の内容は憶えてるのでチンプンカンプンというわけではないのですが、そう言われればそうかなあ、みたいな。
 結局、正しい読み方は、全作品を(できればウェストマコット名義の普通小説まで!)手元に用意して、この本に出てくる箇所を全て実際の作品と照らし合わせること。…まあ、普通はしないというか、するには大変なことですが。つまりこの本は、「楽しい裏読み事典」。
 だったら買わなくてもいいようなもんですが…やはり、CDで言うならベスト盤におけるボーナストラックというやつですな、ポアロの未刊行短篇があるわけですよ下巻に。これも本当は、実際に発表されたものと見比べるとより楽しめるんでしょうけどね。
 ともかくも私は、昔は旧文庫版(あの真鍋博さんの表紙が良かったのだよ)を持っていたのですが家が狭くて処分してしまい(今でも旧版で買い集めたい)、この本と作品を対照することはできません。ただ、1日1作品でも、対照しながら読むことができれば、それはそれは楽しいのではないでしょうか。全作品が手元にある方、もしくは、この本を買って、作品は図書館で借りてきて1冊ずつ研究できる方、には、お勧めです。
 結局、かなりコアなファン向けだぁねぇ。