フリーダ・カーロとその時代

映画タイアップの展覧会。渋谷・東急Bunkamuraミュージアム
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bijutsu/frida/
 これは、「メキシコのシュールリアリスト」というくくり。
しかし、彼女の絵を「シュールレアリズム」と呼ぶのは正確ではない。彼女自身「私は私の現実を描いただけ」と語っている。恐らくはこの言葉こそ彼女の作品の全てである。
 そもそも、彼女の体験自体が、普通の女性の3人分ぐらいにあたるのではないだろうか。彼女自身のバイタリティも、49年の人生の中で、多分150年分ぐらいは発揮されただろうし。全てが「現実」だと思って見て欲しい。逆に、「よくここまで現実を見据えられるなあ」というところがすごいんである。大体、自画像ってそうそう描けるものでもないし、何枚も描けるものではないのではないかしら?
 フリーダ・カーロ。今世紀初頭の生まれ。恋と芸術に生きた「メキシコの伝説」、「炎の画家」。

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 メキシコ革命に青春を過ごし、聡明で美人、将来の夢は医者。ハンサムな恋人にも恵まれた幸せの絶頂、18歳で交通事故に遭い、瀕死の重傷を負う。
 怪我の治療中に出会った絵によって才能が開花し、その絵を通じて、若くしてメキシコの国民的画家ディエゴ・リベラの妻となる。やがて彼女は画家としても夫を凌ぐほどの評価を得るが、どうしようもない女狂いの夫と、交通事故の後遺症に苦しむ。彼女もまたあてつけるように男性遍歴を繰り返す。彫刻家、のちに山口淑子の夫となるイサム・ノグチ、あのレオン・トロツキー、カメラマンのニコラス・ムライ・・・(バイセクシュアルだったともいわれる。私が彼女を知ったのは実はイサム・ノグチ山口淑子李香蘭サイドから)。そして夫との離婚と再婚。
 彼女が描いたのは主に自画像。それもほとんどが様々な姿をした自画像。(結婚当初から晩年にかけて、絵の中での夫の扱いの変化も興味深い)徹底的に己を見つめ、現実を見つめ、常に自分の全てを絵に注ぎ込む・・・

「フリーダのような自画像は、僕にも誰にも描けない」(ピカソ

 フリーダの絵。この絵を理解できる男性が多くなった時、確かに世の中は変わったと言えるのではないだろうか。
 彼女の強烈な絵の中でも最もショッキングな作品「私の誕生」を、現在所有しているのは何とあのマドンナ!彼女は居間にその絵をかけて、どう反応するかを友人の試金石にしているという。それは正しい。
 私も、「私の誕生」は好きだし、他に好きなのは「折れた背骨」、「希望の木は強い」、「生命の花」。かなーり生々しい絵も多いので血とか赤に弱い男性はご注意を。
彼女の絵というのは確かに生々しい。むせ返るような熱帯の息吹と色っぽい生命力、大らかな性の喜びがあふれ出してくる。
 これほどはっきりくっきりばっちり絵で描かれたら、男性なんかは恐怖感すらおぼえてしまうかも。ハジケちゃったら女性の方がはるかに強いっつーことがよくわかる絵ってことだね(笑)
 どうしてもメジャーになりきれないということは、単に気持ち悪い絵、としか思わずに投げ出してしまう人の方が多いのかもしれない。例えその人生を知って、魅力的だと思ったとしても、実際に絵を見ると・・・
 だが、一度人生で大きな苦痛や苦悩を体験すると、彼女の絵というのは、とてつもない共感と癒し(この言葉安易に使うのは嫌いだけどね)に変わる。同じ痛みを知らなければわかりあうことは難しい絵なのかもしれない。
 音楽で私が好きなのはモーツァルトで、一見ただとっつきやすいだけに思える彼の音楽にも同じことが言える。大きな悲しみを知った後では、涙が出るほどにしみてくるのがモーツァルトなのだ。
 まあ芸術というのはそれ自体と共に受け取り手の中身というのも構成要素かもしれず、フリーダについては正にそう。受け取り手の共感なくしては存在しえないテーマの絵ですね。
 苦悩と苦痛を正面から見据える、いい目をしてるよ、彼女の自画像は。
 彼女の自画像にぐっと見つめられると、頑張らにゃあいかんという気がするよ。

 この人にもドイツの血が混じっているとは、偶然とはいえ驚いた(父親がユダヤ系ドイツ人)。彼女の顔はインディオのようなのだが、よく見ると彫りの深い父親の顔。

 肝心の展覧会では、彼女の絵自体は実は1.8級〜2級クラスのものしか来ていなかった。ソースが、彼女の絵を質量共に最も多く所蔵しているドロレス=オルメド財団ではないのだ。大体、彼女オンリーの大規模な展覧会は20年以上前に一度あったきりで(大丸ミュージアムの別の展示に1枚だけ来たのも10年以上前)、本物が見られるだけでも有難いのだけど、やはり画集などで既に彼女の作品に親しんでいる向きには物足りない内容。それでも1、2点は「あ、これはドロレス=オルメドじゃなかったのね」というような有名なものもあったが。
 ただ、特筆すべきは彼女のコラージュ作品が観られたこと。これ、なかなか面白かった。
 もう一人好きな女性画家、レオノーラ・キャリントンの作品が観られたのも有難い。この人の作品は前に、東京ステーション・ギャラリーまで観に行ったことがある。
ローラ・アルバレス・ブラボ撮影のフリーダの写真も、女性カメラマンに対するフリーダの表情がすごくいい。

美の巨人たち」で放送されました
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/f_021228.htm
いいサイトがなかなか見つからないのですが。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/8211/index.html
http://www.octkun.com/artistfile/furi-daka-ro.htm
http://www.ne.jp/asahi/art/dorian/K/Kahlo/Kahlo.htm

 TBS「世界ふしぎ発見!」でも放送されました。
 652回(1999/08/14)「フリーダ・カーロ 不屈の絵筆 」(ミステリーハンター・黒沢裕美)
 これ、もちろんビデオとりました。まだ全然映画とかやる前だったのに、すごいぞふしぎ発見
 ちなみにミステリーハンター黒沢年男の娘。なかなかかわいかったですよ。