盗まれたいの♪〜怪盗探偵を愛するあなたに
エドワード・Ｄ・ホック 木村二郎訳『怪盗ニック対女怪盗サンドラ』（ハヤカワ・ミステリ文庫）
ホックについてはサム・ホーソーンの項で既に述べた。世界で恐らく唯一に近い「短編プロパー」。その彼の主力シリーズ、超超超久々の日本新刊。
「役に立たないもの専門泥棒」ニック・ヴェルヴェット。料金は20000ドル均一（のち、値上がり）。昨日の新聞、終わった公演のチケット・・・彼に盗めないものはない。
しかも、彼の行くところ、大抵はきな臭い事情が絡んでいる。殺人事件までも見事に解決してみせる、元祖”泥棒探偵”。「何故」そんなものを盗めという依頼が来るのか、「どうやって」ニックが盗むのか、「誰が」殺したのか・・・WHYに重点のある、一粒で何度もおいしいシリーズ。短編なのにこんなに内容たっぷりでいいのかっ、と、一つ読むたびに本当に申し訳ないような気持ちになります。
米国では未だに毎月新作短編が連載されているが、日本ではオリジナル編集で、20年ほど前に『怪盗ニック登場』『怪盗ニックを盗め』『怪盗ニックの事件簿』がポケミスで出たっきり、何と昨年になってリバイバルで新装の文庫で登場。嬉しかったですねえ。そしてまた、日本独自編集のこの短編集。
これまでにも存在だけは出てきていた、30代半ばの元売れない女優、今は美人怪盗（若くはないけど）サンドラ。彼女の名刺にはただ「白の女王 不可能を朝食前に」と、電話番号だけ。ニックと違って盗む物にはこだわらない。
手強い商売敵ではあるが、二人はやがて協力しあうことにもなる。そしてニックの長年の同棲相手・グロリアとの関係にも変化が？私としては、もう18年（！）も一緒に暮らしている彼女の方に肩入れしてしまうのだけど。（最近は彼女も、ニックに結婚を迫るのはやめたらしい。ずっと「そのうちにね」と言われてもう飽きてしまったのだろう）
…まあとにかく、要はこのニックがカッコイイんですっ！（笑）おすすめですっ！
まさにハートを盗まれております。
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殺し屋ケラーシリーズも最高だし・・・・・・
バーニイは早川書房、スカダーとケラーは二見書房から。
この人についてもいずれ語りたいなあ。
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