ユダとユダと二人の信長―宇月原晴明『信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)
信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)宇月原 晴明

新潮社 2002-09
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 信長が大変なことになってます(笑)
 でも面白かったな〜。信長嫌い(これも藤沢周平と共通してるんだけど(笑))の私も読んじゃいましたね。
 但し、読むにも体力要りますね〜。すんごい巨大風呂敷で、やっと何とかフンワリ四隅を真ん中にもってきたぐらいの話ですから。いやーでもドキドキして一気読みしちゃいましたね。
 でもここまで広げるパワー、もちろん個々の点ではちゃんと閉じてある点、すごい「執筆体力」といいましょうか。
 今世紀中期に実在したフランスのシュールレアリスト、アントナン・アルトーと謎の日本人美青年の出会いから始まり、見た目、はっきり言ってのっけからものすごくぺダンチックです。信長の生い立ちパートあたりで何とかついていけるようにはなりますがそこでまたがががんです。まあノブちゃんったら。そして、フランスパート、信長時代パートが交錯しつつ進みます。横のスケールもタテ(時間)のスケールも膨大ですね。テンション高い。激しい(笑)。まあそんなことタイトルでわかるけど(笑)
 ローマ皇帝ヘリオガバルス(初めて知ったのですがこの本によると何かカリギュラみたいな人ですね)。キリスト。1000年以上後の信長。異国の神。信長と宗教。オカルティズム。ナ○ス。
 力技…って富樫倫太郎の時も書いたけど、うん、トガちゃんと山田風太郎を読める人ならOKです。というかレイザーカモ〜ン♪HGです。そう、信長好きの山風だったら(というか、でも)手を叩いて喜びそう(笑)1999年の日本ファンタジーノベル大賞受賞作です。初代酒見賢一はえっらい雰囲気の違う重厚な作品ですが、この賞もどんどこまた面白い作家を生んでほしいもんです。
 やはり信長の人生の謎というのはその死の謎に尽きるわけで、この作品はそこからグワーッと遡ってものすごい話を作っているという仕組みでしょうか。何故、天下を目前にあれほど手薄な状態で部下に殺されたのか。何を目指していたのか。いかなる人間だったのか?その「点」から巨大な「面」へと広げ、スリリングで、絢爛たる赤を感じるストーリーで読者をカタストロフまで引っ張っていきます。
 何を感じるかっていうか…やっぱ、読んでる間楽しませてもらった。しばらく「はぁぁ…さいですか」。
 でもこれがエンタテインメントで、読書なんですよね。
 心地よく「はぁぁ…」したい方、ある程度まぁ戦国時代の知識があれば後は、「そうなの」で充分。
 個人的にも、個々のネタでかなり楽しめる数が多かった(笑)そうそう、今年の日曜朝8時の某番組を見ている人にはちょっとおいしいネタもあったな(笑)一瞬だけど(笑)
 いやー。すごかった。