今話題で映画にもなっているあの本

 こんなに普通に話題の本を読んだのは何年ぶりか(笑)
 流行りの本は読みません。売れているものは私が買わなくたって大丈夫だもん(笑)もし読みたくても流行りの本なら間違いなく図書館。でも流石に何百人待ちだかわからないので読まないつもりでいました。そうしたら、友人が持っていた!(笑)ので借りて…20日以上経っていた!許せ友よ!
 買った本には期限がないのでついつい。友達に借りた本も…って駄目だろ!図書館で本を借りるのは今週は減らして、今日やっと読みました。
 普通に面白い作品じゃないでしょうか(笑)この作品が突出しているというわけでは決してありません。勿論、「話題になっているから」で手に取った人を十分に楽しませることができるエンタテインメントではあります。題材もどメジャーですからね。題材や場面割の細かさに誤魔化されてますが筋は真っ直ぐで、むしろ初心者向けと言ってもいい。キャラクター、派手な移動、ディテールへの信憑性の持たせ方、偽の手がかりのばら撒き方、どんでん返しの方法など、詳しく書くとネタばれになっちゃうんですが、全てごくごくまっとうなパターン。つまるところは、「よくできている」ということ。エンタテインメント小説を読みなれている人には非常に平易でしょう。
 冒頭に、「全て真実である」と書いてありますが、真実でない部分はちゃんと、何号か前の『Newsweek』が書いてくれてますので(笑)
 ただ、キリスト教の女性蔑視やそれまでの土着信仰への迫害も微妙に事実なんで、また1つ、虚構の現実の狭間を衝く、という、小説らしい小説が出た、ということです。風呂敷の畳み方もうまくやってますので、キリスト教を知らない人は勿論、熱心な信者でも常識のある人なら怒らないはず、と言ったら熱心な信者の方に怒られるかしら。ラングトン教授自身、彼が学者として身につけた「八方ふさがりの質問に答える術」とは、「問題に正解がないとき、誠実な解答は、沈黙を守ること」と述べています。この作品は、何も断言してはいないのです。
 ラングトンがファーシュ警部に対して思う、「フランス人にとってはキリスト教は宗教ではなく生得権なのだ」という表現。この部分は、警部が結構謎めいていくに従って意味深になります。いやー。結構振り回された(笑)
 ただ、こうした題材(異端とされてきたもの、聖婚の意味etc全部)も、決して新しいネタではありません。30年前に澁澤龍彦が冷静に調べ平明にまとめているものばかりです。先に六本木ヒルズでの展覧会の方を見たのですが、ずーっと「澁澤殿が見たらどんな感想を書くかな」ばっかり気になっちゃいましたねー(笑)あとキリスト教の異端については最近では笠井潔なんかも何度も採り上げていますね。
 アメリカ人の、フランス人への皮肉な見方なんかは面白いですね。地の文が皮肉っぽくて時々笑えるし。
 最後近くの暗号はうまいですね。こういうところも、初心者にも優しくて、「本を読んだ!」という気持ちにさせるんでしょうね。この暗号は、現地に行ったこともあります。確かに、色々な人のを探して歩いたものです。私は案内人なんか目にしなかったなあ。(読んだ方はおわかりになります)あと、苦労して探し回らなくても、詳しい情報は、むしろ日本で『地球の歩き方』に書いてある(笑)
 私が読むかどうかはわかりませんが、この前の作品とかも読んでおいた方がより楽しいかもしれません。
 パリやロンドンの場面は、歩き回った街を思い出して楽しく読めました。ロンドンのブラックフライアーズ橋?忘れもせんわ!乗るバスを間違えてホテルと逆方向、テムズの南岸の住宅地に連れて行かれた時に渡ったのがこの橋さ!(笑)私は北から南へ、登場人物はケント州からロンドンに入って南から北へ、ヴィクトリア・エンバンクメント(堤防)を通って市内へ。
 ちなみに、本文にはルーヴルを完全に見て回ると5週間とありますが、3大重要作品(笑)は勿論、他のものにもちゃんと足を止め(一番充実しているのはリシュリュー翼)ても、エジプトコーナー(申し訳ないが展示は「ごろた石」状態)は通過するにとどめ、休憩は1時間に10秒(水を飲むだけ)にすれば、5時間半ほどで回れます。(オルセーは急げば2時間、ロンドンのナショナル・ギャラリーは3時間半、無論休憩なし)
 ルーヴルと言ったら、「モナ・リザ」のあるフロア、その手前にもダ・ヴィンチの聖ヨハネ(最も色っぽいと言われるヨハネ。作品にも出てきますね)とかいい絵が沢山あるのに、みんなその手前の長い部屋を右側通行で「モナ・リザ」を目指し、Uターンして戻ってやっと左側通行で他の作品を見る。つまり手前の部屋は「モナ・リザ前」「モナ・リザ後」状態(笑)
 中国人観光客、何故「モナ・リザ」を動画で録る!?(笑)←この絵の前は最もスリが多いと必ず注意される場所です。気をつけましょう。
 通常、探偵役というのは容姿の記述はどうであっても勝手にカッコイイ人を想像するものなのですが、これに限っては、これだけ宣伝されてると、余りにトム・ハンクスがちらつきすぎて全然できなかった(笑)トム・ハンクスがかっこよくないわけじゃないんですが。(ちなみに、パリの「カフェ・ド・パリ」で私たちのテーブルを担当したボーイさんが、彼そっくりだった!(笑))
 ソフィも…原作の方が魅力的だなあ。女優さんには悪いけど。警部がジャン・レノ、もちょっと違う…
 ティービングだけは見たいですね(笑)「演技の上手いイギリス人貴族」に、シェイクスピア俳優にして、ティービング同様「サー」の称号を持つサー・イアン・マッケラン。雑誌の映画評でも彼だけが褒められてました。 
 最後に、多分読んだ方の殆どが思われたことでしょうが、お約束なんで突っ込んどきます(笑)
 「小さくて割れやすい」瓶に秘密を書いたパピルスが巻きつけられているのなら、暗号を間違わなくたって何かの拍子に割れない保証はありません(笑)しかもそれをトラックの荷台やら自家用機の中でいじるか!!(笑)物語の中ではさんざん脅しで割るぞー割るぞーと言いますが、今まで割れてない方がおかしい!(笑)
 ちなみに、最寄の図書館では、
 単行本 上巻 471人 下巻 375人
 文庫版 上巻 257人 中巻 231人 下巻 222人
の予約者がいます。重い単行本の方が予約数が多いのは、文庫が出る前に予約してた人が多いということかな。どこの図書館も冊数は結構買ってると思うので、200人待ってても1ヶ月ぐらいで読めるとは思いますが、みんな考えることは同じで、予約者はいつまでも減らないんですね。諦めてお買い求めになるのが無難かと(笑)
 『生協の白石さん』は300何人から始まって、ずっと待ってますが(笑)
 ダ・ヴィンチ・コード(上) ダ・ヴィンチ・コード(中) ダ・ヴィンチ・コード(下)
 私より、SGA851様のレビューの方がわかりやすいですな(あらすじも載ってます)。
 http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2006/01/post_2dac.html