ポール･アルテ『赤い霧』(ブログの2006年7月分よりそのまま移動)
七夕だってのに血まみれ…
し か し ！ ！
「俺的に今年今んとここのミステリが凄い」第1位！（出たの2004年でしたすいません）
| 赤い霧 | |
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・傑作である！
という2点において、この作品は凄い！
フランスの、であることがいかに貴重かは、芦辺拓氏が担当なさったこの本の巻末解説に語られているのでそちらをどうぞ。私もフランスの冒険ものや推理ものは読んできたし、松村喜雄さんの本で詳しい歴史も読みましたが、現代フランスに、本格にして現代本格のこれほどの作家がいることを知った驚きと喜びはまた格別です。
でもって、大傑作です。
「ポール・アルテの他の作品も…」（既に『死が招く』『第四の扉』を読んでいたので）と何の気なしに今回借りてみて、いやー！あまりの面白さ、そしてドラマに感動した！
凄い作品ほど構成が緻密極まりないので、ちょっとでも詳しく説明できない！
故に、面白い作品ほど、面白いから読んでとしか言えない！！！！
（はあはあはあ）
「1887年英国。ブラックフィールド村に、《デイリー・テレグラフ》の記者と名乗る男が十年ぶりに帰郷する。昔、この村で起こった密室殺人事件を、正体を隠して調べ直そうというのだ。（略）当時の関係者の協力を得て事件を再調査するうちに新たな殺人事件が起こり…。
奇怪極まる密室殺人と犯罪史上最も悪名高い連続殺人を融合させ、”フランスのディクスン・カー”と評される著者が偏愛して止まない冒険小説大賞受賞作」
というのが、裏表紙のあらすじ。シリーズ探偵であるツイスト博士は登場しません。作者自身とても愛着のある本だそうです。
第一部は、所謂英国の田舎の、いかにもな遺産を巡ると思われる殺人の、しかも再調査、という、いかにもな本格推理。不可能犯罪（被害者しかいず、出入りも不可能なカーテンの陰で、被害者は背中を刺されて殺された）、謎めいた語り手、残虐な殺人、恋、冒険。
その雰囲気を「フンフン♪」と楽しみきっていたので、第二部に入っての展開（語り手は同じです）に最初はやや戸惑いました。そして、少しずつ、何を描く話なのかに気づきました。勿論、1887年という年で、カンのいい方は既にお気づきでしょうが、私はかなりギリギリまで気づきませんでした。
てゆーか、裏表紙の一番上に太い字で、
「霧の都を震撼させた連続娼婦殺人事件の真相」
って書いてあるじゃん自分！でも、すっかり忘れてたから衝撃がでかくなって、興奮してます。
「まさか！」「まさか…！？」のうちに高まる興奮。
「ええっ？」「ええっ？」…「でもやっぱり…？」の大詰め。
しかし本当に、こんな風に、あの事件が、こんなドラマに！！！
個人的には、好きな話。これは結局何の物語だったかと言えば…英語で4文字、本当は地球上に唯一あればいいものの物語。
こういう哀しい人もいるのだなあ。
あの事件の小説として、間違いなくベストに近いドラマですね。
もうわけわかんない書き方ですが、ギアを入れ替えてここから詳しく説明するよりも、そのことで、初めて読む方の感動を殺ぎたくないのでここまで！
この次の作品（こちらはツイスト博士シリーズ）『カーテンの陰の死』も大変よろしかったです。これなんか正にタイトル通り。アルテ氏、「カーテンの陰で刺される」というシチュエーションが余程お好きなようです。
著者が大好きというポー作品へのオマージュ的な仕掛けもあり。
考えてみたら、アメリカのポーもイギリスのカーもフランスを舞台にフランス人の探偵を登場させているのに、現代フランスの作家が英国を舞台に、まるで英国人のように上手に本格ミステリを書いている。げに創作とは不思議なり。
ちなみにこの『カーテンの陰の死』の解説は霞流一。この人の作品も好き。芦辺、霞両氏共、本格でも独特のパズラーや不可能犯罪といった、正統さと見事なひねりの融合が素晴らしい作家。このアルテ作品にはいかにも相応しいです。
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