ブラウン神父

 古書市で買って、ビニール包装も切らずにあったのを読み直し。全5冊終了。
 前回、1冊目の途中でちょっと感想を書いた時は、「文章が持って回ってる」としか書かなかったけど、いや、実によかった。これなら、これほど「いわゆる推理小説」が氾濫している現代でも読み継がれるわけだよ。1920年代の推理小説なのに、すごい。
 トリックも奇想天外と呼ばれ、確かに、一番乗りのトリックもある。でも一番素晴らしいのは、ブラウン神父の語ること。宗教。人間性。お国柄。社会。体制。心理。言葉遊びではなく、なるほどと思う論理ばかりだ。チェスタトンの特徴として諧謔とか警句とか逆説と言われると、却って現代では理屈のために理屈を言うようなことだと思われがちだが、そんなことはない。元祖で本物である。真摯な諧謔。永遠の真理を言い当てた警句。意味のある逆説。
 それだけに文章も素晴らしく、訳者(中村保夫氏)は苦労しただろうなとも思う。
 面白く、そして引用したくなる言葉、心に刻みたくなる警句が沢山の5冊に、あらためて「こんなに凄かったっけ!」と驚かされ(子供向けのリライトだってあるけど、やっぱり大人の楽しみですな)、ほっといた不明を恥じたのでした。
ブラウン神父の童心 ブラウン神父の知恵 ブラウン神父の不信 ブラウン神父の秘密 ブラウン神父の醜聞