トミー&タペンス映画化

t_masamune2006-09-22

 女探偵で思い出しましたが、「アガサ・クリスティーの奥様は名探偵」(このタイトルもどうにかならんもんか)で、クリスティーのトミー&タペンスものが映画化され、もう日本でも公開されてるんですね(9/9〜シネスイッチ銀座ほか)。イギリスじゃなくてフランス映画というのが不思議ですが。
 原作は『親指のうずき』。後述のように、これは夫婦の老後のお話。
 どっちかといえばお人よしで優しい旦那のトミーと、才気煥発だがおっちょこちょいなところもある妻タペンスの、これまた凸凹コンビ。実は「タペンス」(=2ペンス)とはニックネームで、本名は「プルーデンス」(思慮深さ)という。いつも「全然違う!」とからかいのネタになっている。
 2人は、一時大戦直後の、「2人の年齢を足しても50年にならない」頃から、孫もいる晩年まで、登場作品は5作と少ないですが、長い間シリーズキャラクターとして活躍し、5作品は夫婦の歴史とも言える、楽しいシリーズです。
 『秘密機関』で幼馴染の2人は再会し、スリルと冒険を求めて「青年冒険家協会」を作るのですが、思わぬ大事件に巻き込まれ、解決ののち、結婚を決めます。続いて、探偵事務所を開いた2人が奇妙な事件を鮮やかに??解決する短篇集『おしどり探偵』(早川版。創元版は『ふたりで探偵を』)。更に、スパイ風味ミステリ『NかMか』(この頃は確かポワロも『ビッグ4』とか、ドタバタしてたな〜)。
 私が好きなのは、2人の老年期の『親指のうずき』とやはり『運命の裏木戸』です。年を取っても好奇心旺盛でお茶目なタペンスと、変わらず優しく落ち着いたトミー。勿論、クリスティーの後期作品での凄まじい円熟の例に漏れず、推理と夫婦の年輪を両方楽しめる作品です。
 小学生の頃には、何故かホームズものは「暗い」と思い込んでいて手をつけず、最初に読んだのがクリスティーで、その頃はこの2人が一番好きでした。大分経って30歳近くになって読み返した時には、ポワロが1番、マープル2番、結果的にこの夫婦は3番になってしまいましたが、それは相対的順位の問題であって、このシリーズの面白さは変わりません。
 本の読み方というもの自体そうかもしれないのですが、最初の頃はどうしても自分に近いと自分で思うキャラクターに感情移入するもので、クリスティーものだと、ノン・シリーズですが若い女性が主人公の『バグダッドの秘密』なんかも昔はお気に入りでした。その後自分の見聞が広がるにつれ、自分とは違うキャラクターもどんどん楽しめるようになるようです。あとは私が、昔は物凄くませた女の子だったので、子供向けの探偵小説は南洋一郎リライトのルパン以外読まず、最初からクリスティーの、20代の女性が活躍する話が好きだったというのもあります(リライト版ルパンでも『妖魔と女探偵』が好きだったしなあ←何故小林少年の方に行かない?)。
 そして、結婚した今またもしこの夫婦のものを読み返せば、また違った感想になるかもしれません。確か『親指』と『裏木戸』は持っていたと思うので、読み返してみよう。
 秘密機関 おしどり探偵 NかMか 親指のうずき 運命の裏木戸