全財産危機一髪

 車で○ャスコに行った。安いから。
 郵便局のATMの用事と買い物を済ませてエスカレーターで駐車場へ…
 ハッ!!!!バッグがない!!!!!
 トイレだ!
 そう、会計の後に寄ったトイレの個室に、バッグを忘れてきたのだ。
 中身は全財産。
 相方に渡してあった家計用のお財布は私のポッケに戻っていたが、自分の財布、携帯電話、おまけに家計の通帳2冊と自分の通帳、図書館の貸出カード。
 逆に、これだけあれば生きていけるものである。
 それが一切合財!!!
 当然、財布の中には免許ありクレジットカードあり銀行のカードあり。現金は3,000円と小銭(丁度ATMで預けたばかり)。
 真っ青になって全速力で1Fのトイレに戻るも、なし。
 サービスカウンターらしきところで順番を待って「忘れ物ないですか(はあはあはあ)」と訊くと、「ここはレジですので、サービスカウンターはあちらです」と男性の店員が先導してくれた。余程私の顔が引きつっていたらしく、その店員さんもただならぬ顔になっていた。
 サービスカウンターで、
「忘れ物なかったですか?赤いバッグなんですけど。」
「ああ、バッグね…」
 おおおおおおおおおお。
 マジかい。届いてるのかい。でも赤いバッグったって世の中には沢山あるぞ。
 女性の店員が奥からそれを持ってくる。
 …あ、あたしのだ〜〜〜〜〜。
 「中に、免許か何か入ってますか?」
「○○(私の姓)ですっ、はいあの免許が、ほら○○ですっ」
完全独走な私。免許が出てきて名前と写真で確認。
 店員さんもほっとした(多分)顔だ。
 バッグの中身も全部ある。
 まあそりゃ…届けて自分の名前書いて何か抜き取る人はいないだろうが。
 落し物の記録も細かくて、メモ用紙に時刻と「財布 3000×3 携帯デンワ 1F女子トイレ」を書いたものと、落し物の通し番号や日付と時刻、拾得者の氏名と連絡先、品名を書いた専用のタグの2枚がついていた。
 うーん。
 変な人に拾われなくてよかった。
 心のどこかでは、「これだけ揃ってれば逆にネコババするのも勇気が要るんじゃないか」とは思っていたのだが…
 多分私であってもすぐ届けただろう。
 落し物の帳簿に受け取りのサインと連絡先を書く。するとそこにすぐ、「個人情報保護」のシールが貼られた(最近は細かい)。
 「お礼のお電話とかは…」
「はい、お礼のお電話を…」
と、店員が、拾得者の指名と携帯電話の番号のメモ(拾得者ご本人が書いたもの)を渡してくれた。
 これが、かけてみたら15分ぐらい話中。
 もしかして、非通知電話拒否では?と思い、私の携帯はセキュリティのため非通知にしているので「186」をつけてかけてみると繋がった。
 メモの字から想像していた通り、やや年配の女性のようだった。ようくお礼を言うと、「いえわざわざ…」と非常に謙虚な人であった。
 本当にどうも有難う。
 届けて下さらなかったら今頃精神的に死去していただろう。
 特に携帯が痛い。アドレス帳、インターネット接続、画像、全てに暗証番号ロックはかかっているが、失くすこと自体が。
 最後に言い訳しておくと、こんなことは生まれて初めてである。
 普段は、財布、定期、携帯、全てに鎖か電話のコードのような紐をつけて鞄に固定している。財布と携帯をポケットに入れる時も、ズボンに固定する。昔だったら公衆電話をかける時も、電話の傍に財布などを置かない。携帯品の1つ1つをなくすことには異常に恐怖を抱いている。「うっかり手元が狂っても落っことすことはない」「ちょっとの間でも手から物を放さない」という二重セキュリティ…のはずだった。
 その割には簡単に、手持ちのバッグはふと忘れるものだと知った。
 今日はよほどボケていたらしい。丁度ここ数日の懸案が解消したところだったこともあるだろう。いくら鞄に繋いでいようが、偶々今日持っていた小さなバッグそのものを置き忘れたら意味がない。現金が少なかったことも慰めにはならない。
 あと、「最近の若い男の子なんかに拾われたらわかんなかったよなあ…」と偏見なことも思ったが、よく考えたら女子トイレだからありえない。もう無茶苦茶である。帰りの車内でも電話をするのがやっとで、ダッシュボードにMP3プレーヤーを忘れてきてしまった。
 ああ、今思い出しても本当に怖い。
 うーん。もう今日のバッグはやめよう(ストラップがなく、手持ちしかできない)。もしくは、財布と携帯は絶対ポッケにしよう。もしくはウェストポーチ・ポシェット兼用の現場用腰袋(昔の会社にいた頃、現場に入る時に使っていたもので、図面、カッター、鋏、巻尺、携帯、財布などが全部きちんと入るスグレモノ)だけ使うことにしよう。