寄り道でアリンガム

 今日はちょっと寄り道して、マージョリー・アリンガム『屍衣の流行』(国書刊行会、世界探偵小説全集40、新刊)。(クリスティー『満潮に乗って』も読んだけどね)
 いやー。アリンガムについてはブログでもリコメンドしたけど、やっぱ面白いわ。クリスティーがその才能を羨んだというだけある。これがトリックじゃなくて、多分文章力、表現のことだと思う。ブログでも書いた通り、小説として面白い。乱歩の影響というのは良くも悪くも大きくて、彼が褒めなかったが故に未だにマイナーという面もあるのはとても残念。でも今後ますます翻訳は増えそう。
 訳者の小林晋さんが大変にこのアリンガム作品を愛し、自分で話を持ち込んで翻訳したとのこと。こういうのはいい話だ。当然、彼による詳しい巻末の解説も一読の価値あり。
 アルバート・キャンピオンもの。後期作品と違ってちゃんと彼がバリバリ探偵。今回は事件の渦中にいる、ぶっちゃけ容疑者の1人になってしまうのが彼の実の妹ヴァレンタインだったり、兄妹の出自が語られたりと、なかなかの内容。
 付き合う男が何故か死ぬ天然系女優は、一流デザイナーであるヴァレンタインの顧客。この女優が無茶苦茶腹の立つやつなんだが、兄同様賢く、とても素敵な女性であるヴァレンタインとこのバカ女優の、女同士の虚虚実実のやりとりが上手すぎる。
屍衣の流行 世界探偵小説全集 (40)