またリスト

 北杜夫『優しい女房は殺人鬼』(新潮文庫)
 読んでて面白くなくはないけど、オチがないので結果的に「?」。
 畠中恵しゃばけ』(新潮文庫)
 月曜日、布団の中で読んだ。
 別に…。期待したほどじゃない、という意味で失望が大きかった。
 全体に甘すぎる。あくまで及第点でしかない。同じ賞でのデビュー作品として、宇月原氏の『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』と同等に扱うことはとてもできない。(ということはあの賞は本当に年によってばらつきがあるということだ。)
 冒頭の1行が既に師匠の都筑道夫テイストで、期待して読み始めたのだが、余りに平板な文章過ぎて、半分ぐらいまでちっとも頭に入らずに苦労した。
 「人情」がいいとか言われているが、正直、「この程度で人情?」と思った。作者本人もありえないとはわかっていると信じたいが、主人公をあそこまで優しすぎる人間にしきったことが現代ではウケたのだろうか。しかし、いくら兄を思っていても母親を裏切った父親の行為について余りにも考えがなさすぎる。子供の浅知恵で「父さんと異母兄を許してあげて」なんて言われるのが母親にとって一番辛いことなのに。これは敢えてそういう人間にしているのか、それとも単に作者が若すぎて人間の悪に思いが至らないのか?後者だったら問題である。まあ、藤沢周平レベルを求めても、そもそも賞の主旨が違うのかもしれないが。
 かといって、じゃあ推理の要素はいいかと言えば、謎解きも平凡。やはり、”妖怪系””憑き物系”の知識のない人なら騙せたり驚かせたりできる、という程度。そういう方面についてちょっとでも知ってる人から見れば、「こんなもんか」。まあこの作者が付喪神というものについてオリジナルの味付けもしている、ということにしておこう。
 つまりは、『ダ・ヴィンチ・コード』同様、やはり読書初心者向けの感が否めない(最近では、玄人受けする本は売れないのだろうか)。但しいつか、その初心者が振り返ってみて、この作品が「甘かったなあ」と思えるほどに成長してくれるならば無駄ではない。
 都筑読み、山田風太郎読み、ならずとも、エンタテインメント読みからすれば余りにも足りない。(とはいえ、私が「時代ファンタジー」なるジャンルに高いレベルを求めすぎているのかもしれず、嫌ならもっと考証に凝ったり二重三重四重五重(以下略)の仕掛けをしまくった、ちゃんとした時代伝奇だけ読めばいいのだろうけど。―――但し作者にも、エンタテインメント小説をあと1000冊は読んでほしい。)
 2作目以降は、もうちょっとはキャラクターの心情のリアリティと(ファンタジーだからといって心理描写までいい加減では困る)、その延長に、初心者騙しでない「情」の描き方を期待したい。今後時代物を離れるのか離れないにしても娯楽系なのかあくまでファンタジーなのか或いは人情系に上がりたいのか、いずれにせよこの、3年前の作品では何とも言えない。(まあ、初代受賞者の酒見賢一だって、『後宮小説』を今読んだら相当に甘いしね。)
 あと、病弱萌えの部分ですが…あの程度じゃあ(笑)。いかんな。年季の入った(それこそ30ン年(笑))からすると。だって戦う前に守られちゃってるんだもん。ホントの萌える病弱ってぇのは、まず「病弱なのに制止を振り切って(これ大ポイント)目一杯戦っちゃう」という段階が必要で、その上でもってぶっ倒れなくてはなりません。あの程度の戦いぶりではまだまだ(笑)。今後一層の精進というか一太郎君のご活躍を。
 北杜夫『怪盗ジバコ』『怪盗ジバコの復活』(新潮文庫)
 うっかり『復活』を先に読んでしまったが、問題はない。まあ軽妙な暇潰し。(やっぱりこの人はエッセイとシリアス小説がよくて、ユーモア小説の方はどうも…)
 北杜夫マンボウぼうえんきょう』(新潮文庫)
 来た杜夫『父っちゃんは大変人』(新潮文庫)