ここ数日の記録

 高橋直樹『鎌倉擾乱』(文春文庫) 
 ・鎌倉幕府内の抗争を描いた3本の短編。そのうちの1つ、平頼綱の波乱の生涯を描いた「異形の寵児」に登場する、頼綱に拾われ、怪力の暗殺者として使われる「むじな丸」が、大河ドラマ「北条○宗」では平頼綱本人にすりかわっている。詳しくはいずれ。
 遠藤周作『女』上・下(文春文庫)
 ・遠藤周作最後の小説。この作品における淀殿は、去年の大河の脚本家がパクったような?
 というわけで、今週は、大河の脚本家とは、
「他の優れた作品をどんなにパクっても、参考文献として示さなくてよいという、美味しい仕事」
だと知ったのが収穫か。
 安西篤子『油小路の決闘』(小学館文庫)
 ・淡々と事実が並んでる感じ。タイムリーに「花倉の乱」を描いた短編もあり。
 井上靖風林火山』(新潮文庫)
 ・うーん。やっぱり『しろばんば』が理解できなかった以来、井上センセとは相性が悪いらしい(笑)。でもこの作品は面白くなくはない。1冊というこの長さに相応しくそれぞれの人物像を上手く凝縮しているとは思う。解説が吉田健一というのも侮れない本である(笑)。あと、カンスケの、例の姫への思いは恋というより父親みたいなものなんですね(出会った時50過ぎだし!)。今年の大河は、最初のオリジナル部分が随分原作とはテイストが違ってるんで、そのまま行けばいいものを、単に原作パートに入ったらいきなり、カンスケがこの原作以上にポチになってしまっただけということがよくわかった。脚本家はこの原作から、「カンスケ=ご主人と出会ってからはポチ」としか読み取れなかったのだろうか。まあ任された以上自分なりの解釈でやるんだろうけど。
 清水義範『永遠のジャック&ベティ』(講談社文庫)
 ・あははい。実に笑えた。
 清水義範『永遠のタージ』(角川文庫)
 ・ムガール帝国初期の愛と抗争を描いた真面目〜な歴史小説。でも、特に仰々しい表現もないのに、実に感動した。すごい力量である。中東・インド史に興味がある人で、この作家を知らなかったら人生の損。
 清水義範『映画でボクが勉強したこと』(毎日新聞社)
 ・洋画オンチなんで、「へぇ〜」で終わってもうた。すまん。最近の映画についてもまたこういう本を出して欲しい。
 清水義範『読み違え源氏物語』(文藝春秋) 
 ・これもすばらかしい。お気に入りは「夕顔殺人事件」と「朧月夜」。
 あと、大分前になるのだが、星新一さんのエッセイで大絶賛されていたので読んでみて大正解だったのが、
 豊田有恒『パチャカマに落ちる陽』(集英社文庫)
 豊田有恒『モンゴルの残光』(ハルキ文庫)
 ・どちらも素晴らしい知性の大冒険にして力技。前者はテーマ的に一瞬高橋克彦を思い出させるが、同等かそれ以上。後者は、「もしモンゴル帝国が続いていたら」という、アジア中心の裏返し世界史。これは本編もさることながら著者のあとがきが素晴らしい。清水さんの作品同様、日本における「世界史」の教え方学び方に納得が行かない人は、これを読んで大いに頷くべし!