苦悩天ぷら

 と、苦悩しつつ…
 昨日は、病院の帰りに「天ぷら山の上」の天丼を食ってきた。
 
 「山の上」といえば、御茶ノ水山の上ホテル」でも最も有名な店。というより、池波正太郎がこよなく愛した宿のこよなく愛した店として有名だ(彼が贔屓にした職人近藤さんは現在銀座で「天ぷら近藤」を営む)。
 先日「東京ミッドタウン」の記事でも書いたが、ここにも「天ぷら山の上Roppongi」がオープン。行ってみたかったのだが、昼は混んでる、夜は高いコースしかない(9,450円!!!!より)上に予約が取れない(しかもコース全部食べるのに2時間かかるそうです)。
 ならば。
 何のことはない、病院から歩いて15分ほどの本店に行けばいいのだ。
 高いのはわかっているさ。
 でも覚悟を決めろ、俺。
 と、胸高鳴らせて坂を下りホテルに向かってまた坂を上り…
 が。
 ホテルの入口には、ドアマンの兄ちゃんが2人。ここを入って、「すいません高いのでやめます」とは言えないから、物凄く逡巡。
 が、正面右脇っちょの入口から、この店には直接入れるのだった。
 そしてそれ故に、入ってすぐ、店内のウェイトレスさんと眼が合ってしまい、最早引き返すことはできなかったのだった。
 意地悪なことに、ホテルのHPには昼のコース(5,450円)しか載っていない。しかし実際には、Roppongiの方の昼同様、ちゃんと「天丼」の類があった。私はすぐさま天丼にした。
 3,360円也。
 他にはいくらか安い「掻き揚げ天丼」「穴子天丼」「野菜天丼」などもある。
 天丼の内訳は、海老3、掻き揚げ1、キス1、ししとう2。これにしじみの赤出汁と香の物(これも結構凝ってる)。
 おお。確かに、美味しくなくはない。
 そもそも、掻き揚げったってただのごまかしじゃない。小ぶりとはいえ既に海老が3本ついているのに、この掻き揚げも、海老のぶつ切りと小柱なのだ。しかも海老も小柱も大ぶりかつ、ぷりっぷり。なるほどこれが名店の天ぷらか!!!!
 しかし…
 ワシの中での
「天ぷらが食べたい」
とは、暗黙のうちに、
「カリッカリに揚がったのが食べたい」
なのである。
 であるのに、この天丼は、ぶっちゃけ「つゆびしょ」だったのだ。
 あああああああ。
 特にキスは、こういう仕上げ方がいいとされてはいるのだろうが、身もかなりしっとり。
 全体にびっしょり。
 つゆの味は甘口か辛口か選べるので、辛口にしたのだが、甘くもない代わりに、スッキリ辛口でもなかった。つまりこういうのを所謂「上品な味」と言うのかもしれないが…ぞんざいなつゆの味に慣れきってしまっていたせいなのか、インパクトを感じなかった。
 また、最近は、美味しく揚がっていれば野菜の天ぷらの方が好きな私としては、野菜がししとうのみというのも…
 コースであれば、海老と、沢山の季節の野菜を、揚げる端から自分の前の網の上に置いてくれて、正しく「カリッカリ」が食べられるのである。あるけど。ねえ。そりゃ。財布が。
 さ ら に
 レジで仰天。
 サ ー ビ ス 料 10 %
 ああああああああああああ。
 合計、3,696円
 ギャアアアアアアッ。
 ま…まあ…話のネタに一回は食べてみようってだけだし…(大汗)
 も…もし…つ、次があるんなら、ややや野菜天丼をたたた食べてみようかな、うん。
 あはははは…
 まあ、もうすぐ俗世間を離れ隠遁生活に入るので、最後の贅沢ってつもりなんす。うん。