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 横溝正史『三つ首塔』(角川文庫)
 三つ首塔 (角川文庫―金田一耕助ファイル)
三つ首塔 (角川文庫―金田一耕助ファイル)
 これは、夏前に買って(恐らく図書館には文庫で所蔵されていなかったため)、8月に読もうと思いながらずーっと、図書館で借りた本を優先していたがために、そして、冒頭部分(「序詞」)になかなかとっつきにくくて敬遠していて、ほっとかれていた本。
 しかし…
 面白かった。
 「序詞」が、思わせぶりにくだくだしすぎていて逆にまだるっこしかったのだが、それを越えて本編の部分、というのが時間としては序詞より前の長い長い回想なのだが、そこに入ると一気呵成。金田一の登場場面は少なく、ヒロインカップルの行動が主。莫大な遺産の女相続人であるヒロインとある男の、運命の出会い、そして逃避行を脅かす連続殺人…
 いやー。当時としては新しかった「時代の風俗」をこれでもかこれでもかと採り入れ、それも今となっては珍しくないことばかりなのだが、そもそもが莫大な遺産なんちゅう、もうありえない発端なのでしょうがない(笑)。読んでみてよかった。