北村薫『街の灯』(文春文庫)
街の灯 (文春文庫) | |
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さてこの『街の灯』は、北村先生の第3シリーズ。円紫師匠と私、覆面作家に続く、「わたしのベッキーさん」。
…相変わらず、現実離れしてますなー…
昭和7年、華族の令嬢・英子の新しい運転手は、美貌にして武道の達人、別宮(べっく)みつ子。英子は、『虚飾の市』のヒロインに因んで「ベッキーさん」と呼ぶ。
この『街の灯』は推理小説3作を収録した短編集。どれもよかったです。相変わらず、人の心の襞を抉って裏返してまた戻す、みたいな(笑)。うぬぬぬぐるるう〜っ、っていう(←身を揉んでいるつもり)。
あの令嬢は、この令嬢はこの先どうなるのかしら、という引っ張りもあるので、続編が楽しみです。
私は正直、北村先生の書くヒロインが余りにも「ありえねえ」ので、ヒロイン自体はあんまり好きじゃないんですが…。
解説(貫井達郎)にも、
「『あんな女子大生はいない』という、あまり根拠のない非難を耳にすることもなくはない(W大の文学部にはああいうタイプの女性がけっこういるという話も聞くので、この手の批判は無意味なのだが)。」
とあるが…いや、いないだろ、キュロット穿く女子大生は(笑)。あと、そのW大の文学部の女子大生ってのもいつの話よ(笑)。それとも、W大にはいるというのなら、いつのどこの大学の文学部にだって、真面目な文学少女はいるですよ。何も先生の出身校だからってW大を特別扱いする必要はないです、はい。むしろうちの大学では、英文だの国文だの所謂普通の文学部の子たちはキャピキャピしてて、真面目で固い女の子は歴史系でしたけどね。(私も、高校ぐらいまでは穿いてたかな、キュロット)
そして、今回のヒロインもまた、お嬢様もお嬢様。ま仕方ないでしょう。同じく解説によれば、北村先生は現実の女性を知らないのではなくて、あくまでも「純粋な女性」をヒロインにしたい故の舞台設定、つまり「確信犯」なんだそうです。
…どっちでもいいけどさ。
結局、どうしてシリーズもののヒロインはどうして純粋無垢な少女じゃなきゃいけないのかっていう疑問は解けない。
話は素晴らしいのだが、相変わらず私には背筋の痒くて痒くてしょうがなくなる設定である。
ともあれ。
特に、第2話「銀座八丁」は、色々な楽しい思い出が甦るなど、楽しめたのは確かです。思い出というのは、独身時代のことですね。私がウロチョロしていたのは、銀座ど真ん中ではなく有楽町・日比谷だったんですけどね。
言い添えておくと、「銀ぶら」とは、現在思われているように、あてもなく「銀座をぶらぶらする」という意味ではない。タイトルにある通り、銀座通りの一丁目から七丁目までの「八丁」を、特に夕方以降の出店(と言っても銀座なのでいい品が売っている)をひやかして歩くことである。