島田荘司『リベルタスの寓話』(講談社)

リベルタスの寓話 (講談社ノベルス)
リベルタスの寓話 (講談社ノベルス)島田 荘司

講談社 2010-03-05
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 楽しませてもらった。細かいことは言わず、読書の楽しみはその間だけでも他のことを忘れさせてくれるということであるとすれば十分な作品である。
 色々思うところはあるのだが時間がないので簡単に。
 表題作。コアのトリックは20世紀(これは読みなれた人なら途中ですぐわかる)、但し21世紀のネタと20世紀の負の遺産の絡め方が上手い。乱歩も言っている通り、読者を騙すためのトリックの種類にはどうしても限りはあるが、肉付けの腕が上手くなっていけばいくだけ、無限に推理小説は作れるのだとあらためて思う。島田荘司は毎度毎度、本当に呆れるぐらい、エッヂな話題の取り入れ方が上手い。ご本人場標榜する20世紀本格の21世紀の数限りない変奏。その他、中心となる「寓話」の出所、その寓話がどこまでホントでどこからウソかは、あとがきを読んで頂きたい。
 もう1つ収録されているのは、「クロアチア人の手」。表題作と直接の関係はないが歴史背景は同じ。地元が舞台になっていることと、単純なトリックながら引っ張っていく力はあってこれも楽しめた。
 Amazonレビューには厳しい意見もあるが(みんなよくそこまで真面目に読んでるな…と思うほど)、私にはこれで十分。最初に書いた通り、読書とは気晴らしだからだ。逆に気晴らしというには十分、重い題材だったが。