島田荘司『リベルタスの寓話』(講談社)
リベルタスの寓話 (講談社ノベルス) | |
島田 荘司 講談社 2010-03-05 売り上げランキング : 152293 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
色々思うところはあるのだが時間がないので簡単に。
表題作。コアのトリックは20世紀(これは読みなれた人なら途中ですぐわかる)、但し21世紀のネタと20世紀の負の遺産の絡め方が上手い。乱歩も言っている通り、読者を騙すためのトリックの種類にはどうしても限りはあるが、肉付けの腕が上手くなっていけばいくだけ、無限に推理小説は作れるのだとあらためて思う。島田荘司は毎度毎度、本当に呆れるぐらい、エッヂな話題の取り入れ方が上手い。ご本人場標榜する20世紀本格の21世紀の数限りない変奏。その他、中心となる「寓話」の出所、その寓話がどこまでホントでどこからウソかは、あとがきを読んで頂きたい。
もう1つ収録されているのは、「クロアチア人の手」。表題作と直接の関係はないが歴史背景は同じ。地元が舞台になっていることと、単純なトリックながら引っ張っていく力はあってこれも楽しめた。
Amazonレビューには厳しい意見もあるが(みんなよくそこまで真面目に読んでるな…と思うほど)、私にはこれで十分。最初に書いた通り、読書とは気晴らしだからだ。逆に気晴らしというには十分、重い題材だったが。