4/16 金城一紀『対話篇』(新潮社)

 対話篇
対話篇
 1回2003年に講談社から出たものの新装版なのですが、リクエストが結構混み合っててやっと届きました。(『映画篇』の方はもっと混んでいて当分届きそうにありません)
 短編3つ。
 どれも、死と恋の物語。
 と言っても安っぽいものではなく。
 どちらかというと「恋にまつわる死」というよりは「死にまつわる恋」かな。
 真ん中の「永遠の円環」。えっ、ある作品のあの人がこんなことに―――いや、一向に差し支えないんですけど(笑)。詳しくは秘密です♪
 どれもいい話だったなぁ。敢えて1つだけ選ぶなら私は「永遠の円環」かな。そしてこの物語に出てくるある人物は、これも敢えて比較するなら、スンシンとは似てるのにある意味対極にある人かなあ。だけど、金城作品でこういう形で決着をつける話は実は珍しい。だからこのある人物は、この1篇にしか出てこないと思う。
 次点がラストの「花」。と言っても、そうすると残りは冒頭の「恋愛小説」しかないのだが(笑)
 これも敢えてまとめると、
「何があっても、一番大切な人の手は放すな」
ってことですかね。
 一番大切な人の手を握っている最中に限って、握っていてはいけないんじゃないかとか、放した方がいいんじゃないかとか、様々な誘惑ばかりが目に耳につく。
 更に、人間というのは時々何故か、大事なもの、言い換えれば大事だからこそ重いものを、重いからこそ先に捨てていきたいという誘惑に駆られることもある。
 でも、結局は、すべきことなんか、手を放さないただそれだけで、もし放してしまったら、その後で、大事なことなんか手を握り続けることしかなかったと気づく。
 ただ、「花」では、放してしまっても救われる。
 放してしまってもなお「終わり」でないから、愛は不思議だ。