京極夏彦『姑獲鳥の夏』(講談社文庫、分冊文庫版)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)
分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)京極 夏彦

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分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下 (講談社文庫)
分冊文庫版 姑獲鳥の夏 下 (講談社文庫)京極 夏彦

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 暴風雨の日。このシリーズを読み始めるのに、まことに相応しい日であろう!(←偶然)
 そして私には勿論、今日1日で読み終える自信があったのだよ!
 というわけで、初・京極夏彦挑戦です。
 今から思うと、何で今まで読んでいなかったかというと、「うんちくばっかり」とか、「読みにくい」とか、色々な”食わず嫌い”だったのと、何よりも私は、「売れてる本は別に私が読まなくてもいいだろうから読まない」というひねくれ者だから。
 でも…
 読んでよかった!
 もっと早く読んでいれば…とは、思ってもしょうがないから思わないけど、いやー、とにかく読んでよかったよ。
 だって面白いんだもん。
 いやー、本を読むって面白いねえ(遠い目でしみじみ)。

 しかし…
 数日前、図書館で手に取った時は…
「あー、ノベルス版にしときゃよかった!!!」
 何故なら…
 ぶ あ つ く な い … (T_T)
 あの、「厚さに挑戦する!」っていうのが楽しみだったのに!(子供の頃から…)
 かつ、分冊でも厚いと思ったのに!
 分冊だと、1冊あたり、むしろ今時の文庫本にしては薄めなぐらい!
 ああああああ…
 勿論、この「分冊文庫版」は、「文庫版」と「愛蔵版」を再度校合したもの、と巻末に書いてありますので、より完璧なものではあるのでしょう。どれか1つの版でいいや、という方には勿論これ。私も、もう別の版を読み直す気はないし(笑)
 結論から言えば、最後まで楽しく読みました。
 最初は、結構突っかかったんですけど(これは多くの人がそうだと思う(笑))、というのは、文章はわかりやすいんですが…「もしかして、漢字多いか?」。多分、ちゃんと数えてみると、日本人の文章の平均より、やや漢字の比率が高いぐらいじゃないでしょうか。
 蘊蓄を楽しみに読んだんですが、単なる蘊蓄じゃなくて、ちゃんと肝心な所に戻ってくるんですね。で、最初から思ったんですが、あれは蘊蓄ではなくて問答に近いのではないでしょうか。で、ちゃんと戻ってこられるあたり、筆の腕力を感じます。
 無駄に長いのではなくて、ここまで整合させてるというだけで十分です。
 それと、入り組んでいるというか、多くのことが心の奥深くで起こる話なので、関口の一人称というのがいいのかもしれない。意識の流れ手法というか。
 ただ―これまた多分、この作家の作品を叩く人の伝家の宝刀だろうと思うのですが―、「わかる人にはわかってしまう」ネタの積み重ねですよね。
 推理小説というのは、元々手を変え品を変え…の世界だから、それはそれでいいんですけど。
 それに、他ならぬ京極堂自身、「ありえないことなどない。起こったことは全て、ありうることなのだ」と言っているのだから、起こる全てに原因や理由があるわけで、そのいちいちが、わかる人にはわかりやすかろうと、結果はおんなじことなわけです。
 途中で真相の輪郭はわかってしまっても、読ませる力があるから、私は、音に聞く京極堂がどんな真相解明の舞台を作ってくれるのか、それが楽しみで読み進みました。
 そんなところです。
 あとは、ピンで主人公張れるような探偵が2人出ている贅沢さか。まあこれは最初の作品ということもあるでしょうし、榎木津メインの作品もあるんですよね。
 …しかし。
 これだけは。
 ネタバレギリギリだけど。
 最初の伏線は、いくら何でもちょっとわかりやすすぎない?(笑)
 推理小説を読み慣れた人なら、最初にどこで間違ったのか、空にお天道様があるよりも明らかだよね(笑)
 上巻のかなり最初の段階で、どう掛け違って、誰だったのか、わかってしまう可能性が高い。
 まあそれはそれですが、最後まで楽しく読みました。
 ちょっと、子持ちには色々な意味で辛いけど(^^;)
 血まみれのグロい描写は別に気持ち悪くはないんですけど。他の色々が。母親にとっては、どんな子供でも子供だから。
 世の中には、何についても、叩く人は必ずいるし、超有名シリーズなので色々な論があるとは思います。しかし私個人には、これは面白い作品です。
 そして、他の作品も読んでみなくてはならないのですよ、エノさん!
 (ただ、1回の貸し出しで借りるのは1作だけにしておこう…読むのにパワーが要るので)