姑獲鳥の夏

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姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション
姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション
 (この記事は、加筆の上ブログに再掲しました)
 「明日書く」と言いつつそろそろ1週間に…
 えー、Amazonレビューでボロクソだったんで、一体どんなにひどいんだ!?と心配しながら観たのですが、…
 普通じゃん?(笑)
 普通にちゃんとできてるんですけどね。
 多分、原作を読んだことのある人は、その「普通」程度じゃとても満足できないんでしょうね。
 その気持ちもわかりますけど。
 でも、こう言っちゃ余計説得力ないかもしれないけど、この監督以外だったら、もっとひどい、それこそ本当に、二目と観られないものになっていた可能性が高いです。
 実相寺昭雄は、この世で唯一、乱歩作品をまともに映画化できる人ですからね。…ってこの人ももう地上にいない!(号泣)
 私も原作好きです。何たって、ただ長いんじゃない、この原作にも「蘊蓄が多い」って聴いてはいたけど、実際はただの蘊蓄じゃなくて、本当に必然性のある長さだったから驚いた。尊敬だってしちゃう。
 だからって…
 それをその通り映画化したら、何時間かかるんだ〜(笑) 
 Amazonレビューの中には、こんな映画を褒めるなんて実相寺ファンはおかしいとまで書いてるものもあったけど、そりゃあそっちこそひどすぎるよ。
 「D坂の殺人事件」という、乱歩作品の映画化としては最高傑作があります(最高だと思ってるのは私ですが、私だけではないと思う)。
 今回の映画も、ほぼ同じ手法です。「D坂」の場合は短編「D坂の殺人事件」と「心理試験」を合体させ、再構築し、真田広之という素晴らしき役者バカ一代を得て、人の心の闇と裏側と深層とを描き出しました。今回は、非常に込み入った、そして必要な情報が余りにも巧妙に全編に亘ってちりばめられた謎解き物語を、この「謎解き」の面白さのみに絞って再構築し、筋の通る一本の話に仕上げています。
 原作も、色々な要素が重なって、一見ただの絵空事のようにも、ホラーにも見えるテイストですが、結局は「謎解き」です。それも、見事な。他のどんな要素も、ちゃんとこの「謎解き」に何ら無駄なく繋がっている。どんな非現実的な現象にも、完全に理由が示されている。その重厚さ、構成美が、このシリーズの凄さだと思います。
 この、”再構築”の部分に、原作ファンは不満なんでしょうな。
 しかし、繰り返しますが、他に方法があるとして、多分、この監督のこの方式でなかったら、原作の”味付け”の部分ばかりが強調されて、怖ろしく表層的で下らない、三流作品になる可能性は高いです。それだけ、「料理」の難しい原作なのです。
 だからむしろ、しっかりと「謎解き」に絞り、かつ、原作のキャラクターもほぼ過不足なく描き出し、雰囲気も十分に(この監督らしく、ややオーバーなぐらいなのも、見慣れていない人には腹立たしいのかもしれませんが)再現しているこの映画は、原作のよさを台無しにしているどころか、原作の骨格の部分はすっきり再現されていて、何ら問題はない映画化だと思いますね。
 個人的には、堤真一の着物姿が見続けられたことで十分幸せだったり(笑)
 まあ、この監督の映画の画面ってのは、ああいう感じです。
 「D坂」もよかったし、オムニバス映画「乱歩地獄」のうち、一番まともだったのもこの監督の「鏡地獄」だった。このオムニバス映画の、他の作品のひどさ、あるいは過去の凡百の乱歩映画を知ってれば、この実相寺版「姑獲鳥」をボロカスに言う人が、いかにないものねだりしてるかわかるぞ(笑)
 ただ、ちょっと合わなかったのは、これまた唯一この映画では評価の高い田中麗奈嬢(笑)。いや彼女が悪いんじゃなくて、少年っぽい恰好で、何だか「雑誌記者」を「豆記者」みたいにしちゃってますね。私の、原作でのイメージと唯一違うキャラでした。中禅寺敦子というキャラは、周囲の人間(笑)と違って、唯一の「まともな社会人」ですよね。現場に出る時も、もっと普通のOL風なんじゃないかと思いますが。
 あ。
 「D坂」における小林少年的な存在を、この映画でも出したかったのか、監督は(笑)。と、今気づいた。
 というわけで、あんまし期待しないで観れば、「え?これで十分じゃん?」です。
 DVDは色んなバージョンが出てますか、まあ普通にレンタルして観てみればいいんじゃないでしょうか。
 そうそう。小林少年って言えば。
 三輪ひとみ嬢…
 あれかー。あれが彼女だったのかー。
 あの小林少年がーああああああーーーー…
 「D坂」OBとしては驚いたぞー。ま、私は「D坂」でしか知らないのですが、どうも特撮関係のファンの方には有名みたいですね。 
 ↓小林少年その他、観たい人はこちら。オススメ。やっとDVD化したのね…映画館でも観たし、ビデオ持ってるんだけど、買おうかしら…(結局買っちゃいました)
 D坂の殺人事件
D坂の殺人事件